SELECTION
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大塚友貴
恐れて、憧れて。
Super Jury

「ヒルサイドテラス」を中心とした代官山の建築は、訪れた人を迎え入れるような形態が採用されている一方で、立ち並ぶ店舗の高貴なブランドイメージから、恐れ多さも感じます。私はこの建築手法と実際の街のイメージとの間にある矛盾こそが代官山の豊かさであると定義し、あえて立ち入り難い街のイメージを肯定するような新たな代官山の建築を提案します。
まず敷地に土楼のような、巨大な、ブルータリズム的な壁を配置しました。閉じつつも、地域の施設として開くために、代官山の成り立ちの歴史から建築のあり方を考えました。現在、代官山には路地から入る小規模な店舗が並んでいます。こうした場所に集まるのは創造的に自己を実現しようとする来訪者です。その存在が、代官山への立ち入りがたさを生み出すと共に、この地への憧れを生み出しています。過去には、代官山同潤会アパートメントを中心に住民同士のコミュニティが形成されていました。当時の住人同士の交換バザールが、現代の代官山の商業や観光に影響を与えています。
来訪者から成り立つ現代と、住人によって成り立つ過去の代官山のあり方から、壁で閉ざすことで住人を守り、かつてのようなコミュニティを形成し、壁を開くことで来訪者の冒険心を奮い立たせる建築を考えました。

具体的には、巨大な壁に幾何学的な凹凸を設け、周囲に緊張感を与えます。その壁に上階に向かって大きくなるようなヴォイドを挿入し、開口を決定していきました。全体を地上レベルから1,200mm浮遊させ、来訪者が中を覗き込むような構成とします。

 

1階は、店舗と住居で明確に動線を分離し、住民が静寂な空間を感じられるよう計画しました。2階と4階にメガストラクチャーとなるスラブを挿入し、大地と見立て、その間に2層のSOHO型のメゾネット住戸を距離を取りながら配しました。外壁により全体をひとつの家と見立て、個々の住居自体の壁の透明度を上げています。3階と5階からは下の階を見下ろすことができ、街のような雰囲気が生み出されます。共用部はリビングやダイニングのような使い方ができ、自由な生活を促します。

2階平面

1階平面

立面・断面

講評
西田司

構成や説明は非常にクリアで、模型写真も良かったです。ただ、ファサードが色々なことを決めてしまっているので、2階・3階が暗くなってしまっているのではないでしょうか。自分で構成したものを創造的に壊すように、メガストラクチャーのスラブを均質にせず吹抜けを設けるなども考えられたと思います。

石川初

現在の代官山は、開放的な建築が多いながらも、実は選択的で、拒絶があるというのは良い分析だと思いました。開くことはもはや良い環境をつくり出さないと。これは現代におけるゲイテッド・コミュニティのあり方を示唆する批評的、アイロニカルな案ですね。であるがゆえに、1階をもっと閉ざすとか、大通り側は閉じて背後の緑豊かな方に開くなどのアプローチもおもしろかったかもしれません。

秋吉浩気

住戸の構成が映画のセットのようだと感じました。こういうことは本当にあり得るかもしれません。ここに住む人の人物像をより具体的に想定した方が提案に熱が生まれたと思います。