SELECTION
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松野駿平
SPLIT
Super Jury

集合住宅にとって隣人とは、合理的な住戸計画によって生まれた副産物で、密集したなかで不本意に知り合う関係性では、交流は生まれづらいと考えました。そこで、むしろ距離をとることにより、逆説的に人々のコミュニケーションを生むような建築を目指しました。
まず、各住戸を分離させ、共用廊下から渡り廊下で住戸にアクセスする構成にすることで、各住戸を適切に遠ざけます。住戸の間の空間に配置したポーチやベランダなどは、周辺住民との接点になります。例えば、SOHOの仕事場とつながるポーチは、仕事の打合せができるような外交的な側面を備えるなど、公私のグラデーションによって機能をレイアウトしています。階ごとに互い違いに配置されたベランダは、適度な距離を保ちつつ、この建築に共に住んでいるという意識を生み出します。

住戸は2種のメゾネットと2種のフラットの計4種類で構成されており、それらを立体的に組み合わせ、玄関をずらして配置することで、隣人との距離を確保しています。1階と地下1階には商業エリアを配置し、イベントスペースとコワーキングスペースを整備することで、「渋谷おとなりサンデー」などの地域イベントに参加できるような構成です。
居住者用のエントランスは落ち着いた南西側にあり、居住者、利用者、管理者によって動線を明確に分離しています。地下1階は主にレストランとトレーニングジムからなり、上階からは直通エレベーターでアクセスできます。

3階平面

2階平面

1階平面

地階平面

立面は7.2mの住戸と3.6mのヴォイドが反復する形式を表し、ヒルサイドテラスに代わる代官山の新たな構成を提言しています。密接でも絶縁でもない、自由な隣人関係の醸成に期待しています。

長手立面

長手断面

短手立面

短手断面

講評
石川初

おとなりさんを好きに選ばせろという態度は現代的だと思いました。庭が同じレベルにあると確かにお互いにカーテンを閉めたままにしてしまいますが、距離があって、階が異なることによって良い距離感が生まれています。新しい戸建て住宅の提案にもなりそうな予感があっておもしろかったです。

西田司

コンクリートのフレーム構造の存在感が強すぎるように感じました。強いフレームを採用するのであれば、住戸の界壁やバルコニーの形状や大きさを自由に計画できるようにしても良かったのではないでしょうか。3面にバルコニーがつくれるというのは発明的でおもしろいと思います。