SELECTION
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木内俊克賞
秋山真緩
ちいさな芸術家たちのいえ
Super Jury

「ちいさな芸術家たちのいえ」というコンセプトで、子どもと大人が対等であることを再認識できるような空間を設計しました。『子どもたちの100の言葉』にある教育方針は、敷地の公園にあるプレーパークの自主性の考え方と重なると思って、着目しました。レッジョ・エミリアの考えを建築に反映させ、基本的に3つの視点を軸とし、地域との関わりが生まれるプログラムを提案します。

ひとつ目は、子どもたちが世界を広げることができ、地域の人も参加できるワークショップのスペースを設置します。ふたつ目に、アトリエを設置します。3つ目に、子どもたちの作品を記録し、一般の人が干渉できるギャラリーをつくります。
ひとつの入口から中庭を媒介として分岐する動線計画で、訪れた地域の人と交流が生まれます。また、高さの操作によってセキュリティを確保しています。
2階は、外部を走り回ることができる子どもたちの空間です。
地下1階の一般の人が利用できる空間は、半地下を中心とし、たまり場としてくつろげるスペースにしました。
グランドレベルの中庭は、訪れた人々の挨拶によってセキュリティが保たれます。

構造体の操作として、二面の壁を斜めにして、半屋外、半屋内空間など、ひとつの箱に4つの異なる空間ができます。多様な角度の壁によって様々な活動、遊びが誘発されます。
配置計画としては、様々な活動に合わせてつくったボックスを、全体として回遊性が生まれるように置いて、それらを屋根と階段でつないでいます。公園にあった木々はそのまま残し、敷地の外から視線が抜けるようにしました。ゆるく区切りつつ、園内の賑わいが街に溢れ出るようになっています。ボックスのつなぎ目となる階段や屋根により、先が見え隠れしながら上下の移動が楽しい空間になります。
住宅側と公園側に対し、それぞれボリュームのグラデーションをつくり、高さや斜面の向きによって街に溶け込むようにしました。公園側の屋根は丸みを持たせることで柔らかい印象を与えます。また、公園側に向けて傾斜をつけることで、人を引き込みやすく、外部から活動が見やすいようにしました。

斜めの壁が、階段、滑り台、秘密基地的な場所、木の葉っぱが真上にくる窓など、いろんなものに変化し、子どもたちの感性を豊かにすると考えます。
創造性と学び、生きる権利において、子どもと大人が対等であることを表現しました。レッジョ・エミリアの考え方を建築に利用して、地域の地域とのつながりを生みつつ、子どもと大人の関係性を再定義する場を設定しました。

平面

断面

講評
勝矢武之

よく考えられたプランだと思います。「太田市美術館・図書館」(設計:平田晃久、2017)は、四角いボリュームをプレートでつなぐという発想でつくられていますが、この提案は、ボリューム同士が直接はつながらないけれど、お互い関係し合うところがありますね。
模型を見て少し気になることとして、建築の言語が、色々と混じり過ぎている印象です。例えば、平行四辺形のボックスと不定形な屋根の相性や、形の見え方についてはもう少しボキャブラリーを整えた方が良いかと思いました。この斜めの壁のおもしろさを全面化して、子どもの場所がつくれたら良かったかもしれません。大きな屋根が不純にしてしまっている印象を受けます。

高橋堅

大人が考える空間の魅力と、子どもが考える空間の魅力には違いがあります。子どもは無意識な行動が多く、それを的確に捉えることは難しいですよね。青木淳さんの『原っぱと遊園地』という本はご存知でしょうか。遊園地では沢山のものが用意されているけれど、原っぱには何もない。子どもたちは、原っぱでは自分たちでルールをつくり、大人たちとは違う次元で遊ぶことができます。手取り足取りではない状態の方が、子どもたちにとっては楽しいのかもしれません。

木内俊克

力作だと思います。平行四辺形のボックスをつくると4つの異なるスペースができるというのは、なるほどと思いました。斜面の裏側に入り込む床や、ひきこもる床というのが描かれていますが、子どものための施設にそのようなコーナーを積極的につくるというアイデアもおもしろいですね。普通に解くと難しいところを、造形力をもって模型でなんとかつくっているので、平行四辺形のボリュームの嚙み合わせによって生まれるおもしろい空間をもっと展開させていく可能性があると思います。

佐藤光彦

パースが素晴らしくよく描けています。斜めの壁は、扱いが難しいのですが果敢なチャレンジだと思います。少し異なりますが、事例として「枡屋本店」(設計:平田晃久、2006)や、「情緒障害児短期治療施設」(設計:藤本壮介、2008)なども参照してさらに検討してみてください。