SELECTION
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非常勤講師賞(齋藤由和・中村航・野島秀仁賞)
保坂友哉
Chiyoda Culture Hub -街の文化を発信していく結節点-
卒業設計

敷地は千代田区神田小川町3丁目の小川広場を含む区画です。周辺は、日本屈指のスポーツ店街、古書店街、サラリーマンの街、様々な個性が密集しています。しかし、小川広場には、小川町商店街によってイベントが多く開催され、地域住民や子供が多く集まる一方で、広場はビル群の裏側に位置し、大通りから視認することはできません。
現代は、ネットショッピングの普及や在宅勤務の拡大で、実空間の価値が低下しています。そこで私は、スポーツ・商業・オフィスを複合させ、実空間に足を運びたくなるような施設を提案します。

まず、在宅勤務などによる運動不足に対処するため、従来のオフィス空間にスポーツジムのような設備を併設する提案を行います。加えて、スポーツ用品を実際に試用し、体験しながら商品を選べる空間を設計します。オフィスで働く会社員が仕事帰りにスポーツをしたり、ショップと企業が連携して新商品の試用を行ったりする風景をつくり出します。
運営管理はオフィスに入る企業が行います。連携によって、スポーツ研究・開発に参与することも考えています。
1〜3層は基壇部分で、立体的な広場として計画します。4層目以上は、スポーツ棟とオフィス棟を分棟にし、それぞれの採光・通風・視線の抜けを確保しました。また、建物は細かくセットバックしており、小さな立体広場を建物上部にも配置しています。
連絡橋を各所に配置し、斜めの動線を取り入れることで全体の回遊性を高めます。地域の看板の文化と呼応し、外装には巨大な出窓を各棟に設けることで、窓に現れるアクティビティが、日々様相の変わる看板の役割を持ちます。
オフィス棟では階段状のステージで会議を行ったり、スポーツ棟ではアスリートがテラスで一休みしたりなど、様々な視線がつながるよう設計します。各スポーツ空間がショップと共に積層された建築をつくることで、新しい体験を生み出します。

1階にはオフィスのエントランスとボルダリングを配置し、オフィスの顔になります。また建物中央のメインアリーナの吹抜けは、多くの視線が交差する場となります。スポーツ・商業・オフィスが交わる立体広場は、街のエントランスとなります。

 

3階にはスキー広場、陸上トラックを計画し、それぞれがショップとつながっています。パブリックビューイングなどに使用されるスキー広場は、街に開かれた公園のような場所となります。

6階のサブアリーナはショップ、屋外アリーナと連携しており、屋内と屋外が緩やかにつながるように計画しています。

Chiyoda Culture Clubは、スポーツ・商業・オフィスという3つの文化が複合し、街へ発信をしていくことで、衰退が進むスポーツ文化の再生・復興の可能性を見出します。

断面・立面

講評
中村航

体験の時代と言われているなかで、実店舗をどうするかというテーマに真摯に取り組み、現代ならではの新しいコンプレックスのあり方が提案されています。プレゼンテーションまで含めた力作だと思います。この施設がコマーシャルに成立するのか、もしくはショップが付属した公共的なものなのか、掴みかねるところがありましたが、そうした設定を詰めていくことで、より現在的なかたちを考えられると思います。

飛田幸作

千代田区のスポーツ施設の建替えという社会的な要請に対して、批評的な考えがもう少しほしかったところです。また、複合する機能としてオフィスは少し弱いように思います。ネットビジネスを考えれば物流機能などは当然必要になってくるでしょう。eスポーツを取り入れるなどの可能性もあったのではないでしょうか。

富永大毅

大きな施設にスポーツ関連の機能を集約させると、この建築のみに人々が集中してしまい、街全体の魅力を薄めてしまうかもしれないので、ヴィクトリアのような販売店ではなく、スポーツメーカーが集まって新商品の開発をしたり、一流アスリートがプロモーションするための空間に特化するという説明の方が、新しい商品開発と販売店と街のあり方が構築されておもしろいと思いました。