SELECTION
  • 1 / 3
  • 2 / 3
  • 3 / 3

小俣陽也
居場所の園
Super Jury

柱とスラブの単純な構造体「Source Table」によって、園児に寄り添いながら、大人との関係も育むことができる場をつくりました。壁を差し込んでいくことで多様性のある居場所になります。

平面は回遊式で、3歳児〜5歳児が共同で部屋を使います。中庭を通して保育室が見え、つながりを感じられます。園児や街の人の生活に介在するよう、中庭型でありながら開放的な空間を目指しました。
南側には公園に立ち寄った人がひと休みしたり、園児と関わることができる「つながり通路」を設けました。壁はなく、柱に沿うように手すりを設け、ゆるやかに仕切っています。

平面

遊戯室は、イベントなどの際に開放できるように南側にエントランスを設けています。静かな住宅街側には園児の作品展示や子育て支援室などのパブリックスペースを設け、街の人が立ち寄りやすいようにしています。
園庭は「Source Table」に囲まれていて、のびのびと遊ぶことができます。Source Tableのスケールを小さくした椅子や遊具などもあります。周辺地域への広がりという意味で、このSource Tableの南側を公園内にまで設けることもできると思っています。
屋上庭園からは遊んでいる子どもたちの声が周囲に漏れ出します。

保育室は高さの違う「Source Table」によって光の入り方が変化します。屋上でも「Source Table」が遊具のような役割を果たします。高さの違いにより、上からも下からも互いの姿が見えます。
作品展示室は、天井からの視線が遮られていて、園児からの目線を気にせずに作品を楽しむことができます。遊戯室の天井高は高く、開放感があります。
子育て支援室の壁は一部ガラスになっていて、園庭の様子が見えます。
高さと大きさが異なる「Source Table」による多様性を持った空間が、人と人との関係性を生み出し、子どもと子ども、子どもと街の人をつなぐ楽しい園になります。

講評
勝矢武之

よくできると思います。ただ、パラメーターを変えて微妙な変化をつけながら全体的につくるという手法は万能感があり、スケール感が出て、多様な場所ができているように見えますが、どこも同じような空間になってしまう、ある範囲の空間の質にとどまってしまうという側面があり注意が必要です。つまり「ここは保育室です」と言わなければ、空間の区別ができない。全体のサイズとパラメーターによる要素を見た時に、どれだけの変化量があれば十分に多様で豊かな場所ができるかを考えてもらいたいです。ルールに縛られてスタディの手が止まってしまったり、そのルール内でゲームをやること自体が目的になってしまう可能性があるので、地道に個々の場所を考えていくことが重要です。「つながり通路」や遊戯室あたりはこの図式がうまく活かされていますが、北側は、空間をバラしただけで、屋根と平面、光の入り方など質を高める余地があると思いました。
パラメーターを使うことで、内部空間と外部の廊下がひとつのデザインのルールによって解けている点は評価できます。パラメーターを使いながら、様々な問題をつないで解ける形式を見つけられると良いですね。

木内俊克

様々な屋根によって生まれる上下方向の抜け、あるいは水平方向の抜けや絡み合いなどに興味を持って設計がされていることがよくわかりました。ただ興味がそこで終わるのはもったいなく、狙った効果がどこでうまくいき、どこでうまくいっていないのか、自分で積極的に評価して、それを根拠に寸法や物の取り合いを調整していけると、設計もプレゼンテーションも変わってくると思いました。

高橋堅

構造形式のようなものを提案しているのだけど、その仕組みが建築を良くするという確信を持ったときに案を展開するべきだと思います。壁がなくて両側に開けているので、上部からの光の効果はそれほど期待できないですね。園庭をなくして敷地全体にこの仕組みを展開し、上からしか光が入らないような状況であれば、この形式の妥当性も上がるでしょう。また、建築には剛床という考え方があって、水平面をバラバラにすることは構造的に不利です。屋根同士をもっと重ねれば、光がコントロールできると思いますし、空間の連続性が生まれたように思います。