SELECTION
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高橋堅賞
伊藤茉奈
重なる3つの世界
Super Jury

人工地盤からなる3つの世界と多様な空間がある集合住宅を提案します。代官山に多くの人が訪れるのは、賑わいと落ち着きというふたつの要素が混在した魅力があるからだと考えました。それを可能にしているのは、散策の体験ではないかと思います。また、代官山は再開発による新たな住人と古くからの住人が混在しています。それはギャラリーやサロン、旧朝倉邸などの文化によって可能になっているのではないでしょうか。
これらから、私は代官山を構成するキーワードとして「散策」「文化」「混在」を抽出し、設計しました。

リサーチから、敷地の性格に合わせて4つにゾーニングし、分棟形式としました。プログラムは縦方向に配置しています。人工地盤によって各棟を横方向につなぎ、隙間の道を回遊できる散策性を持たせました。
1層目は旧山手通りに面する地域性の高い地盤、3層目は空とつながる低層の住宅街のような地盤、これらふたつに挟まれた2層目は人工的な非日常空間とし、全6階、3つの異なる世界が生まれます。

断面

地盤それぞれの特徴を説明します。一番下の地盤は道路と連続する商業空間です。人の目に留まり、立ち寄りやすいフロアなので、ヒルサイドテラスで目指された旧山手通りからの回遊性などを意識しました。地下1階にはネイルサロンなど予約して入るような店舗、2階にはオフィスなどを計画しています。

「1層目」平面

2層目は、店舗と住戸が混在した中間領域で、地盤同士に挟まれた非日常空間です。3階はすべての住戸に土間を設け、カフェやオフィスにすることで自己表現の場となります。共用部に住民のアクティビティが表出します。4階は地盤に面していないので、寝室や浴室を配置しました。住宅は挟まれた地盤を構造的に頼りにして、スケルトン・インフィルのように運用することで、住民や時代によって建物が変わっていく想定です。

「2層目」平面

3層目は、空が見える低層の住宅街のように設計しました。2層目とは違い、プライベート性を高くしています。5階の土間はちょっとした事務所やキッチン利用が中心です。シェアの畑やキッチン、コミュニティスペースなど住民同士の交流促進を目指しました。6階は、4階と同様にプライベート空間、寝室と浴室を計画しています。

「3層目」平面

旧山手通りのヒルサイドテラスの立面は、コンクリートから金属加工パネルへと時代によって変遷しています。この建築の立面は、後期のヒルサイドテラスの景観に合わせ、エキスパンドメタルを用い、視線を適度に遮りながら風通しを得ることができます。
人工地盤は住戸と店舗を区切る役割を果たしていますが、欠けたところからの視線や音のつながりによって、多様性と適度な距離感が保たれています。この人工地盤は「境界でありながら、境界ではない」と定義しています。

講評
勝矢武之

積層した人工地盤によって都市を立体化するというアイデアは、論理的だし良い空間ができそうだと思いました。1層目と3層目は良いのですが、やはり問題は、空も見えず地面とも切れている2層目だと思います。建築空間として解いてほしいという思いもありますし、プログラムなどの工夫も必要です。また、8m×8mスパンのグリッドで6層重なっているので、ショップがある2層目へ引き込むアクセスや、吹抜けがどれだけ開放的空間になっているかも気になりました。プランだけではなく、パースなどで立体性も検討してほしいところです。

木内俊克

僕も2層目のあり方が重要だと思いました。1層目や3層目と同じボキャブラリーで解くのではなく、スケルトン・インフィルなどのアイデアや、ボリューム・素材を他の層と変える手もあったのではないかと思います。

高橋堅

1層目はヒルサイドテラスのような雰囲気が感じられます。2枚ではなく、1枚の人工地盤だけで、その上に分棟形式の集合住宅があって空への抜けがあるというプランも考えられたのではないかと思います。