SELECTION
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佐藤光彦賞
山口結衣
弧の家
Super Jury

住宅の事例を調べるなかで、伊東豊雄さんの「中野本町の家」(1976)に興味を持ち、家族のための私的な空間を考えました。一方で、谷中の街の雰囲気や、町内会館や公園に面した敷地は、地域に開かれていると感じたので、プライベートな内部空間とパブリックな外部空間が両立する住宅を考えました。
スタディを繰り返した結果、円弧を用いるのが良いと考えました。現在分断されている町内会館から公園への見えをつなぐように配置しました。
円弧の中心は人が集まる空間で、複数の円弧によって押されたような室内は内向的な空間です。東側の一番小さな円弧は公園に向け、子どもたちが公園の延長のように使ってくれたらいいなと思います。南側の大きな円弧は町内会館の延長であり、西側は住民のためのスペースになっています。

内部は、天窓を設け、ぼんやりとした光が入ってくるようにしました。広場に対して壁をセットバックさせることで圧迫感を減らしています。内部にはほとんど壁がなく、円弧により家族内のプライバシーを保ちつつ、心地よい距離感が取れるような形になっています。各階には吹抜けを互い違いに設け、縦方向にも程よい距離感をつくっています。
子ども部屋の棚は兄弟の背の高さに応じて本が取れるようにしています。デザイン的にも平面の曲線と同じボキャブラリーを用いています。

平面・立面

断面

講評
木内俊克

各平面をずらして積層するだけではなく、内向的な空間を保ったまま、曲線をうまく立面方向にも組み込んで足元のみ外部に開くところを設けるなど、外部とも豊かに連携させる可能性もありえたように思います。

勝矢武之

ボリュームのずれから光が入るという基本的な構成が良いと思います。円弧に挟まれた狭い空間はおもしろいと思う一方で、その他の西側の尖った空間のあり方はまだ検討の余地があるように思います。

高橋堅

外部空間についてあえて言及せず、内部の論理に集中してつくった方が良かったのかなと思いました。プライバシーや人の動線、光の入り方、うねる壁の構造形式を一気に解く構成のアイデアがあれば良かったですね。