SELECTION
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優秀賞
先崎亜美
未知満ちて密な道
Super Jury

「住居と商業に加えて、文化の拠点があれば、人の交流がもっと熱くなると考えたんです」、これは槇文彦さんの言葉です。この「文化の拠点」となる場所が、敷地南側の路地空間によって可能となると考えて設計しました。代官山ヒルサイドテラスをはじめとした有名な建築が建ち並び、低層で伸びやかな街並みが広がっていますが、その代官山らしさを培っているふたつの要素を発見し、分析しました。
ヒルサイドテラスは、1期・2期では旧山手通りに対して、3期では建物として、4期から6期では場所としてのヒルサイドテラスづくりを行っており、7期ではさらに広範囲へ都市性を強めていきました。
敷地南側は、住居と商業が混在していて、次から次へと景色や雰囲気が変わっていく路地があります。曲がりくねり先が見えず、進んでいきたくなります。さらに、高低差によって路地の魅力を立体的に体験できます。
このふたつの要素の分析から、路地のように様々な機能が混ざる空間こそが、文化の拠点になると考え、「道」に着目をしました。ヒルサイドテラスが初期から50年経ち、成熟した街の新たな50年のスタート地点となります。従来のコンプレックスは、商業と住居の動線は混ざることはありません。様々な機能が混ざる空間の機能をつなぐ部分として路地を介入させることが、より多くの人が文化を体験するきっかけになると考えました。
自立したボリュームには風通しや日当たりなどの環境的なメリットや、四面が外気に面し、外とのつながりが強くなるというメリットがあります。

GL+5,000mmレベルでは、商業、住居に加えて、コワーキングスペースや休憩スペース、庭のようなスペース、ギャラリーなど、住民がここを訪れた人たちに対して開く場所を配置し、路地と呼ぶ空間へそれぞれの雰囲気をにじませています。
路地は、単なる廊下ではなく、遠回りさせたり、スロープがあったり、様々な機能が混ざっているからこその体験になります。目的を点在させ、必ず通る歩行空間が、他の機能に興味を持たせることができます。さらに、隙間によってほどよい距離感をつくり出しています。断面的にもそうした構成になっています。

GL+5,000レベル平面

断面

構造計画は、1m角のRCの柱をメガストラクチャーの幹として、そこから枝葉のように、方向とレベルを自由に変えた鉄骨の梁がキャンティレバーとして張り出しています。
平面的にも断面的にも同じ構成だからこそ、縦にも横にも斜めにも人々の交流が垣間見えます。曲がりくねる道、階段を用いた代官山的路地によって、人々の交流がさらに厚くなるのではないでしょうか。様々な興味のベクトルが溢れ、混ざり合い、芸術、生活、振る舞いのすべてが人々に影響を与え、文化の拠点となります。

講評
高橋堅

大きな柱から枝葉のように床がキャンティレバーで出ているという説明の割には、串刺しにされた感じを受けます。ボリュームの間に隙間が生まれていることが重要なのでしょうか。構造から自由でありたいのであれば、柱は丸柱でも良かったですね。この形式にさらに回転というしくみを与えれば、植物が生長する際に光や空間を探すように、この建築もまた動き始めるのではないでしょうか。自分が発見した仕組みをドライブさせることで、自分が想像もしていなかったようなものを生み出してしまうこともまた、建築のおもしろさのひとつです。

勝矢武之

この空間に入った時、内部がどうなっているかという視点で細かいところまで設計されていますね。真ん中に大きなヴォイドがあって、その脇にコワーキングスペースがあったり、時々斜めの部分があったり、好感が持てます。
気になったのは、「道」に引き込むための街との接点です。街を歩いていて、気がつくとこの中に入り込んでいるような感じや、街のスケールからグラデーショナルに引き込んでいく操作が必要だったと思います。キャティレバーを採用するのであれば、もっと足元のボリュームを抜いて、人を引き込むような形にできたと思います。

佐藤光彦

部分模型が魅力的ですね。部分をつなげていった結果として全体が出来上がっていますが、全体性について、構造も含めてもう少し明確な設定が必要かもしれません。