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奨励賞
小野寺瑞穂|卒業論文
地区特性からみたエリアプラットフォームの組織及び活動の特徴 -全国98のエリアプラットフォーム団体の実態整理を踏まえて-
卒業論文

1.序論

①研究の背景及び目的

近年、全国各地でエリアマネジメント活動をはじめとした公民連携まちづくりが展開されている1)。併せて、自治体をはじめ、まちづくり会社や商店街など多様な主体が集まる「エリアプラットフォーム」(以下、エリプラ)が全国的に設立され、その需要も高まっている。

しかし、エリプラ設立における網羅的な状況把握がなされておらず、設立や運営、活動方法を模索する団体が多い現状にある。これは、エリプラを取り巻く地区特性(都市機能の集積及び人口規模)の相違により、全国にあるエリプラの中でも、どのようなエリプラの事例を参照しながら進めていけば良いのかが不明瞭であることが原因だと考えられる。

このような状況から、エリプラの現状把握をはじめとした組織及び活動の詳細な実態整理を行い、各地区特性に合ったエリプラの場及び組織の活用可能性を探る必要があると考える。

以上を踏まえ、本研究の目的は、「各地区特性に合ったエリプラをつくることが、場や組織の活用可能性を広げる第一歩になる」という仮説を設定し、エリプラの実態を整理した上で、地区特性に基づきエリプラを分類し、分析をすることで、エリプラの組織及び活動の特徴を明らかにする。

図1.エリアプラットフォームの組織及び活動の特徴

②研究の方法

アンケート調査より、各エリプラの進捗について整理する。また、立地・組織・活動特性に着目し、アンケート調査に基づく分析をする。さらに、地区特性に基づいてエリプラを分類し、各パターンと組織及び活動特性との複合分析による比較分析を行う。研究対象は、国土交通省の「官民連携まちなか再生推進事業」2)に2020年度から2022年度の3年間で採択された98団体とする。

2.エリアプラットフォームの現状に関する傾向

エリプラが徐々に設立されており、未来ビジョンの策定を進める団体が多いことがわかった。また、エリプラ設立による成果として、地域のさまざまな人が集まり、情報の共有や意見交換をすることで、組織力が強化し、まちづくりに向けた協議や活動につなげている一方、財政や体制に関する課題を抱える団体が多いこともわかった。

3.立地・組織・活動特性からみたエリアプラットフォームの実態

「居心地が良く歩きたくなる」空間の整備や人材及びネットワークの構築・拡大を目的に設立しており、自治体以外による発意も多く、民間や地域主体で進みつつある一方、事務局や運営・活動費用はいまだ自治体が負担する現状にあることが確認できた。また、エリアマネジメント団体などが主体となり、未来ビジョンの策定や社会実験など様々な活動が展開していることを確認できた。

4.地区特性によるエリアプラットフォームのパターンの分類と組織及び活動の特徴

エリプラの対象地域を分類3)すると計4パターンに分類した。また、分類した4パターンと組織・活動特性の複合分析により、各パターンの組織及び活動の特徴を出した上で、「❶多様型エリプラ(PA)」、「❷公共型エリプラ(PB)」、「❸次世代型エリプラ(PC)」、「❹地域資源活用型エリプラ(PD)」と位置付けた。

表1.複合分析による4パターンの結果

5.まとめ

本研究では、地区特性に基づく分析により、エリプラの対象地域の地区特性に関係なく、人材に関する目的が多いことなど4点のエリプラの組織の特徴を明らかにした。また、エリプラ対象地域において、都市機能が集積し、人口規模が大きい(PA、PB)と、公共空間に関する活動が多いなど3点のエリプラの活動の特徴を明らかにした。

本研究により、エリプラをこれから設立する団体やエリプラの組織体制などの運営及び活動方法を模索している団体が、エリプラ対象地域の地区特性の理解をした上で、自分たちの近いパターンや状況がどのようなものか把握しやすくなったと考える。また、それに伴い、各団体が類似事例を参照しやすくなると考える。

本研究では網羅的に組織及び活動の特徴を明らかにしたが、今後、ヒアリング調査をはじめとする詳細な区分での比較や分析を行うことで、より具体化したエリプラの特徴及び課題を明らかにすることが今後の研究課題であると考える。

図2.エリアプラットフォームの組織及び活動の特徴

1)国土交通省都市局まちづくり推進課、『「官民連携まちなか再生推進事業」について』、2022年、https://www.mlit.go.jp/toshi/file/system/221202221202_%E6%A6%82%E8%A6%81%E8%AA%AC%E6%98%8E%E8%B3%87%E6%96%99.pdf(最終閲覧日2023年1月13日)

2)国土交通省「まちづくりの可能性を広げるエリアプラットフォーム」、2020年、https://www.mlit.go.jp/toshi/pdf/pamphlet/areaplatform.pdf(最終閲覧日2022年7月30日)

3)国土交通省『「住み続けられる国土」の地域構造について』、https://www.mlit.go.jp/common/001179884.pdf(最終閲覧日2022年1月20日)

4)松下佳広、泉山塁威、小泉秀樹『公民連携による公共空間の維持管理及び利活用手法としての都市利便増進協定に関する研究網羅的傾向及び類型化による都市利便増進協定の特徴と課題』、日本都市計画学会、都市計画論文集、第53巻、3号、pp.732-739、2018年

5)国土交通省都市局まちづくり推進課「官民連携による街づくりを推進します!〜官民連携まちなか再生推進事業の実施事業者を決定〜」、2020年、https://www.mlit.go.jp/toshi/pdf/seido/200730_官民連携によるまちづくりを推進します!.pdf(最終閲覧日2022年7月26日)

6)国土交通省都市局まちづくり推進課「官民連携による街づくりを推進します!〜官民連携まちなか再生推進事業の実施事業者を決定〜」、2021年、https://www.mlit.go/toshi/pdf/seido/210401_官民連携によるまちづくりを推進します!.pdf(最終閲覧日2022年7月26日)

7)国土交通省都市局まちづくり推進課「官民連携による街づくりを推進します!〜官民連携まちなか再生推進事業の実施事業者を決定〜」、2022年、https://www.mlit.go.jp/toshi/pdf/seido/220401_官民連携によるまちづくりを推進します!.pdf(最終閲覧日2022年7月26日)

8)宋俊煥、泉山塁威、御手洗潤『組織・活動特性から見た我が国のエリアマネジメント団体の類型と傾向分析全国の「都市再生整備計画」の区域を対象として』、日本都市計画学会、都市計画論文集、第51巻、3号、pp.269-276、2016年

9)宋俊煥、藪谷祐介、泉山塁威、保井美樹「エリアマネジメント団体の雇用形態からみた事務局人材と活動特性の傾向分析」、日本都市計画学会、都市計画論文集、第55巻、3号、pp.821-828、2020年

10)丹羽由佳理、園田康貴、御手洗潤、保井美樹、長谷川隆三、小林重敬「エリアマネジメント組織の団体属性と課題に関する考察全国エリアマネジメントネットワークの会員アンケート調査に基づいて」、日本都市計画学会、都市計画論文集、第52巻、3号、pp.508-513、2017年

11)吉村輝彦「地域まちづくりの推進のための包括的プラットフォーム及び財源枠組みに関する考察高浜市におけるまちづくり協議会を中心とした取り組みを事例に」、日本都市計画学会、都市計画論文集、第48巻、3号、pp.267-272、2013年