SELECTION
  • 1 / 4
  • 2 / 4
  • 3 / 4
  • 4 / 4

安西祥大・池田桃果・木内康介
都市の棲処 -駐車場空間から読み解く余白の創出-
Super Jury

神田錦町エリアは建物が敷地いっぱいに建ち並び、道と建築は分断され、空間的余白がありません。また、都市に住む人々は自宅と職場を往復する生活で、ゆとりがありません。これらの背景から、空間的・精神的な余白をつくり出す、都市の棲処となる空間を提案します。対象エリアは千代田通りと首都高に隣接する駐車場を選定し、自宅と職場の中間領域としての安らぐ場を挿入します。
用途は、空間的余白と精神的余白を両立するための小さな空間を貸し出すプログラムです。利用者のニーズに沿って、時間帯によってホテルからレンタルオフィスになるなど、異なる使われ方ができるように設定します。カフェ、サウナ、ジムなど安らぐための様々なプログラムを連携させます。

既存の空間的余白と道を活かすために、エリアの中央にヴォイドを配置し、囲み、中庭とします。そのうえで分棟とし、敷地内に路地的空間をつくり、人々を道から中庭へと誘い込みます。ボリュームはブリッジでつなぐことで、中庭が立体的に包み込まれます。

1階平面

地上レベルには飲食店を配置し、道路へもデッキを伸ばすことで賑わいを広げます。上層にいくにつれ、スケールの小さい空間を配置して、徐々に個人の安らぎの場へと変化します。

2階・3階・4階平面

1階は道を介した中庭空間によって敷地の境界を曖昧にし、開きつつも囲まれた場が生まれます。
2階は分棟でありながら視線の抜けを設けることで空間が繋がり、階段やデッキによって地上と接続します。
3階のブリッジは余白空間として捉え、居場所をつくり出すことで目的の異なる人が混ざり合う場所になります。
4階のレンタルオフィスは時間帯によってインテリアを変化させ、雰囲気や利用のあり方が変わる空間です。
5階は泊まれる本屋で、精神的にも安らぎを与える場所として考えています。

その他の空間でも様々なスケールで建築の内外に余白を設けることで、安らぎの居場所となっていきます。「生きられる都市空間」とは、余白を創出することで自ら拠り所を見つけられる棲処であると考えました。

講評
馬場兼伸

都市の暫定空地という余白と、精神的余白を重ね合わせて、都市に住む人々の居場所のあり方を探ろうとする問題意識には共感しますが、具体化していくための理念や手法がないままに見えます。既定の開発手法を理解し、それに対してどんなオルタナティブがあるのかを描いてみてはどうでしょうか。

佐藤淳

世の中に既にあるレンタルブースやシェアオフィスなどとの違いがわかりにくく、説得力が弱いのではないでしょうか。パースでは共有空間だけでなく極小の空間も描くべきで、社会的なリアリティまで描いていけると良かったと思います。

津川恵理

余白が必要な人にアプローチするには、受動的でも能動的でもなく、意識せずとも座ってしまっている、気づかない間にそうなっていた、というようなナチュラルなコミットが建築として構築できると良かったですね。