SELECTION
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最優秀賞
宮田太郎
コマワリの家
Super Jury

漫画家の父をもつ4人家族の住宅です。
普段私たちは漫画に描かれているコマ割りの余地を様々に解釈し、コマとコマをつなぎ合わせています。余地は読み手の自由な解釈を許すもので、使い方が定義されていません。この構図を住宅に落とし込み、住む人と街の人によって様々な活動が起こり得ると考えました。

コマ割りの余地(以下、コマワリ)、つまり道にはコマの解釈が表出します。谷中は住宅が密集しているためか、あらゆる道に様々な活動や生活が現れています。おっちゃんが紙芝居をしていたり、飲み屋のビールケースを使って道端で話し込んでいたり、プランターがたくさん置かれていたり、そうした谷中の風景はコマワリの使われ方と似ています。
設計では、大きな道(スロープ)を敷地中央に敷き、そこからコマを割っていきました。

コマワリは寄り道のように存在し、コマとコマをつなぎ、ひとつの活動からあらゆる活動に展開する余地を生み出します。家事をしながらガーデニングを始めたり、漫画を描きながら道に出たり、というきっかけになります。

外観はいくつかの家から成り立っているような造形にしました。中央のスロープは、公共の道路であるかのように誤解されます。スロープは子どもたちが約束ごとを書いたり、大人がちょっとしたお知らせを書くなど、落書き帳的に使われます。
街からアトリエ、さらにキッチンへと続き、スロープに食事場が溢れ出します。それは路地から覗く谷中銀座の風景を思わせ、谷中に新たな「吹き出し」が生まれます。

講評
佐藤淳

スロープが2階へつながっていることは、活動の広がりとしてだけではなく耐震要素としても有効で、それを踏まえるとさらに提案が広がりそうです。ニュートラルに外壁が並んでいますが、耐震壁の配置次第で、ガラス張りの透明感のある壁にするなどの追求もできるでしょう。

津川恵理

敷地を構成する要素の抽出に独自性があります。自分で発見した谷中性にコマワリという言葉を与え、建築として展開する方法まで練られています。街で起きていることがこの敷地でも起きると思えます。全体にとてもバランスの良い提案だと感じました。

馬場兼伸

プレゼンテーションがうまいですね。すべてのシートがコマ割り風につくられながらも、それらの間に曖昧さが残っています。コマやコマワリの線引きが明快でなく家具的なコマワリもあるなど、様々な解釈ができるルーズさが秀逸です。