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安藤秀太|卒業論文
東日本大震災復興における立地特性から見た道の駅の役割
卒業論文

1.研究の背景と目的

復興事業の完了が進む中で、道の駅が果たす復興への関わり方に立地や周辺環境による影響が大きいと考えられる。本研究では、道の駅について、東日本大震災後の中・長期的な道の駅の使われ方や役割を沿道と沿岸の2つの立地特性から明らかにすることを目的とする。

2.研究概要

本研究では、岩手・宮城の道の駅の東北自動車道の東側に立地する46施設を対象とし、沿道立地特性(東西沿道型、三陸沿道型、三陸東西沿道型、非沿道型)と沿岸立地特性(浸水域型、非浸水域型、内陸型)で分類を行う。そして、国土交通省などの資料や対象の道の駅で行った現地調査やヒアリングをもとに分析を行った。

3.結果

沿道と沿岸の2つの立地特性を掛け合わせて12種類に分類し、分析した中で、特徴的な3つの型を取り上げる。

①浸水域・三陸沿道型

①浸水域・三陸沿道型の道の駅は、震災以前に登録され、津波によって被害を受けた道の駅が多く、すべてが震災後に新しくなっていることが特徴である。復興初期に営業していなかった道の駅もあり、復興後期に被災地との関わりが大きくなったと考えられる。道の駅では震災伝承施設の設置や地元店舗の出店が見られ、被災地へ人を呼び込む役割や地域の産業の復興に寄与する役割を担っていると考えられる。そして、三陸沿岸道路が整備されたことで道路との結びつきが強くなり、人を呼び込む役割や復興に寄与する役割はより大きくなったと考えられる。

②非浸水域・三陸沿道型

②非浸水域・三陸沿道型の道の駅は震災後の変化が最も大きかったと考えられる。震災直後から地域住民の利用が多く、地域住民の移転などで周辺環境に変化が起こった。これに伴って道の駅では、施設や扱う商品を変化させることで地域住民に買い物の場や集いの場を提供する役割を担った。また、三陸沿岸道路の状況が変化したため、道の駅では工事関係者から観光客へと利用者の変化が起こり、復興の中で幅広い利用者を受け入れていた。そのため、復興の初期から被災地に関わり、現在まで継続的に被災地との関係性が大きかったと考えられる。

③内陸・東西沿道型

③内陸・東西沿道型の道の駅は浸水域との距離が離れているが、東西幹線道路に面していることで東北自動車道から被災地へ向かう復興関係者に多く利用された。これより、震災直後から復興中期にかけて被災地に向かう物流を下支えする役割を果たしたと考えられる。その一方で、三陸沿岸道路の開通とともに徐々に東日本大震災への関心が薄れていき、復興に関係する利用が減少したと考えられる。

図1.各型の道の駅の様子

図2.型ごとの復興との関わり方と時期

4.まとめ

沿道と沿岸の2つの立地特性に着目して分類し、東日本大震災後の活用のされ方や変化に着目すると、沿岸部では被害や復興道路の有無によって復興への関わり方や深くかかわる時期が異なることが分かり、内陸部では前面道路と被災地の関係によって復興初期に一時的に復興への関わり方が大きくなることが明らかとなった。津波被害は事前に予測されており、道の駅の被害もある程度想定される。これを踏まえ、津波被災地へ向かう道路に面する道の駅では復興初期の一時的な  型ごとの復興との関わり方と時期

復興関係者の利用増加が想定されるため、災害以前から駐車場や広場の整備が必要となる。津波被災地に隣接する道の駅では周辺環境の変化に伴って幅広い利用者が想定されるため、防災機能や休憩機能の拡大など、変化するニーズに合わせた継続的で柔軟な対応が求められる。実際に津波被害を受けた地域では、道の駅は住宅より早く再建することも可能であるため、復興初期から計画を行うことで復興のシンボルになることや新設される施設に伝承施設や地元店舗を活用することで、復興後期に人を呼び込み、地域復興に寄与することが求められると考えられる。

図3.津波被害に関する道の駅の整備に対する提言

5.参考文献

1)東日本大震災からの復興・復旧に向けた取り組み|国土交通省:https://www.mlit.go.jp/page/kanbo01_hy_002322.html(参照2022.12.10)

2)道の駅公式ホームページ:https://www.michi-no-eki.jp/(参照 2022.9.17)

3)道の駅概要|国土交通省:https://www.mlit.go.jp/road/Michi-no-Eki/outline.html(参照 2022.12.10)

4)復興道路復興支援道路全線開通全長570㎞の道路網:https://tohoku-fukkoudouro.jp/ (参照 2022.11.15)

5)産経フォト:https://www.sankei.com/photo/story/news/200428/sty2004280008-n1.html(閲覧日2023.2.18)

6)朝日新聞デジタル:https://www.asahi.com/articles/ASLCZ3DFGLCZUNHB007.html(閲覧日2023.2.18)