SELECTION
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馬場兼伸賞
野村月咲
道をとく
Super Jury

代官山の街は道の存在によって支えられていると感じます。そこで都市に平面的に展開する道の可能性を広げ、立体的な空間として構築し、変化を続ける代官山の骨格となる建築を目指します。
小道は道に面する空間同士を結ぶ一方、大通りはそれらを隔てる存在になっています。道には活動があふれ、坂道やカーブにより建物の見え方が変化します。多様な道により街のあらゆる顔が見え隠れする、そんな代官山の気配を建築に置き換え、街から建物、共用部、住戸までを結ぶもの、隔てるものとしてエレメント化を行いました。

ファサードの開口は内部の各層に従属しない形で、建物内で過ごす人の意思とは関係なく活動が見え隠れしています。
商業エリアでは店舗同士が独立し、店舗間には小さな路地のような空間が生まれます。道幅によって自然発生的な道と交通手段としての道、立ち止まって休憩する道が存在しています。

商業エリア平面(部分)

住戸エリアは、垂壁・袖壁・腰壁の存在により、心理的に隔たれ、物理的に結ばれる空間です。個人が重視され、隣人との関係が希薄となる現代の生活のなかで、建築の操作によってその関係を繋げる計画です。共用部はコモンリビングと定義し、住戸の延長として読書をしたり、勉強したりする空間です。住戸での活動やくつろぎが共用部へ表出し、家族以外の人同士で共有されます。

平面

住戸内部では、パブリック、セミパブリック、プライベートの空間がグラデーション状に配置されます。腰壁に座ったり、キッチンから住宅奥の活動が少し見えたり、入ってきた人の足が見えたり、少しずつ互いの活動が共有されます。

講評
佐藤淳

壁が多い建物なので、それが耐震壁なのか可変の壁なのか、鉄筋コンクリートなのか透明な壁なのか、はっきり示して空間がつくれると良いですね。構造壁は上下階でまっすぐ通す必要はないので、空間の使途に合わせて設定して大丈夫です。多様な開口の大きさや位置について、太陽光の動きや空気の流れと共に設計できるとより説得力を増していくでしょう。

津川恵理

道の考え方を建築、住戸にまで織り込むことに成功していて、空間が曖昧に構築されていることが模型からも読み取れます。外壁が後付けされていることが気になりました。内側のロジックをファサードにも示すような構成にする、もしくは道的な空間を挟むことで内外を切り離して別のロジックであることを明示する方法などもありそうです。

馬場兼伸

都市構造を建物に入れ込むおもしろい発想で、ひとつの都市といえるくらいの多様なコンプレックスになっています。惜しかったのは、大通りがただの外壁になってしまったことです。境界としての空間を内包させた外壁にできればより良かったと思います。