SELECTION
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優秀賞
大森そよ風
ミタテル
Super Jury

代官山は「ヒルサイドテラス」や「T-SITE」に代表されるおしゃれなイメージがある一方で、カフェや工事の仮囲いなどが点在し、親しみやすさもあり、相反するものが共存する街です。異質な空間同士が共存する事例の調査をすると、内部に外部が存在する空間や、脱nLDK、1家族1住戸の型にはまらない住戸形式がありました。相反するものの融合は、互いの存在を引き立て、新たな豊かさを生み出します。

住戸と商業エリアそれぞれに、内部を感じる空間と外部を感じる空間を共存させた複合施設を設計します。
まず、外壁に見立てた厚さ50cmの鉄筋コンクリート壁をつくり、内部空間を外部に見立てた空間をつくり出しました。諸室の中にある「見立てた外壁」は空間の境界になります。
見立てた壁により、商業エリアでは販売スペースと飲食スペースなど、ひとつのエリアにふたつの空間をつくることができます。また住戸エリアでは、住戸内部に外部と見立てられた空間が生まれます。

住戸Aタイプは、リビング・ダイニングをインナーテラスにして共用部側に向け、庭に見立てた外部を感じる空間をつくります。Aタイプの住戸を隣合わせに配置することで、アクティビティを共用部にまで拡張し、世帯を超えた交流を目指します。住戸Bタイプは、玄関からバルコニーまで一直線の道を通しています。玄関を出ると外の景色が見え、個室に直接アクセスできるので、ワンルーム住まいのひとり暮らしの人とも、世帯を超えた緩い繋がりをもって生活できるような、nLDKの概念に捉われない住戸です。

5階平面

SOHOでは、吹抜けを用いて厚さ50cmの壁を一軒家のファサードに見立て、ここでも室内に外部があるような空間をつくりました。SOHOは仕事とプライベートが一体化し生活にメリハリがなくなるデメリットがありますが、仕事スペースが外部を感じる空間になり、住戸スペースに入る際に家に帰るような感覚を得ることができます。

講評
佐藤淳

50cmという極端に厚い壁を設定し、その他は軽い素材で、外部へは片持ちで住戸空間が張り出しているという明快な空間構成に好感をもちました。平面図と断面図でも、それらをわかりやすく表現してほしかったです。

津川恵理

集合住宅のnLDKの型から考え直すという態度が建築家らしいです。新しい普遍性を獲得するためには、共用廊下側に向いたリビングの魅力が伝えられると良いですね。リビングは外部に面していることで自然採光や通風にメリットがありますが、それを打ち崩すような魅力的なデザインが求められます。

馬場兼伸

力強い構成で、複雑だけれども緻密かつ明快なプログラムもあり、メッセージ性の強い建物になっています。すべてを計画し尽くそうとしている印象があり、そのことがやや息苦しさを生んでいるので、見立てた壁は純粋なフレームとして住民が使い倒せるようにするなど、偶発性に委ねられる要素も織り込めるとなお良かったと思います。