SELECTION
  • 1 / 4
  • 2 / 4
  • 3 / 4
  • 4 / 4

佐藤光彦賞
細野開友
谷中を弛緩する
Super Jury

大学生と父母、祖父母と猫5匹のための住宅です。
それぞれ異なる生活リズムで暮らすなかで、お互いを尊重しつつも家族のつながりを感じられる住宅を考えました。家族を一度個人単位に分割したうえで、再接合する際に谷中の街がつなぎ材として機能します。
谷中の魅力は、路上の看板や植栽、生活感あふれる自転車や洗濯物、道に座りながら街ゆく人に声をかけるおじさんなど、商店街の道や路地の風景です。家族がつながるための要素として、敷地に道を通し、それを自由に使い倒す谷中の人々の意識を住宅内部に取り込みます。

敷地に2本の道を通します。1本目は西側に隣接する町会館に向けることで、閉鎖的な町会館を開きます。2本目は北側に隣接する寺に向けて通すことで、お墓参りをする地域住民のショートカットのルートにしつつ、この敷地を所有する寺との関係を築きます。

平面

2本の道によって生まれた4つのボリュームを分割し、谷中の雑多感をつくり出すために、平面的・断面的にずらします。1階はみんなの居間、学童、卓球台、カフェなどを配置し、縁側空間も設けることでパブリックな場とします。2・3階は家族が居住するプライベートな領域ですが、2階に路地を設けて家族それぞれの部屋をつないでいます。

ボリュームのずれによる隙間はネコのすみかになります。谷中はネコの街として有名である一方で、住民はネコに対して必ずしも好意的ではありません。谷中の道と同様、ネコが街の共有物として、自治会や学童の活動を通して路地コミュニティのきっかけになります。路地やネコによって、家族内だけでなく地域住民同士の関係性が弛緩することを願っています。

講評
佐藤淳

ボリュームを分割して組み合わせることと構造や幾何学を含めて言及してほしかったと思います。屋根の形状や斜めの壁がネコの行動などと紐づけて考えられていると、提案がより豊かになります。

津川恵理

アジアのセルフビルド建築のような、アドホックな模型に興味が湧きました。この野蛮なつくり方についても自覚して言語化していけると良いですね。

馬場兼伸

1階は谷中の特徴をしっかりと捉え、住宅に街のパブリック性をまとわせて弛緩させることに成功しています。一方で2階は、2階ならではのネットワークやボキャブラリーをさらに整理すると、断面的にも周辺と繋がるさまが表現できるでしょう。ネコの行動も考慮すると、暮らしとネコと周辺環境とをうまくオーバーラップさせることができそうです。