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斗米真生
お祭り食堂
Super Jury
現状の子ども食堂は、いつどこで開催されているかわからない、周囲の目が気になってアクセスを躊躇するなどの問題点を抱えています。しかし、夜に多様な人々が集まり、子どもたちが気軽に食事をしているという状況は、「お祭り」に見られる光景だと気が付きました。本提案では、お祭りをテーマに子ども食堂を設計します。
お祭りという言葉からまず浮かんだイメージは、垂れ下がる提灯と多くの出店です。これらを建築によって表現し、明るく立ち寄りやすい子ども食堂の空間をつくります。櫓に見立てた柱を中央に配し、そこから放射状に広がる平面計画になっています。
櫓から提灯が垂れ下がったような構造はそのまま屋根を構成しています。柱は敷地中央から東側にずらしており、西側の軒を地面まで下げることで、屋根の上にステージやテラスを設置しています。必要な用途を分散して配置し、その間を円環状の渡り廊下でつないでいます。様々な通り抜け空間が生まれ、どの方向からも敷地内へアクセスできる計画としました。
1階平面
立面・断面
分散して複数配置した出店のための空間は、昼間は構造だけが残り、子どもたちが入って遊んだり、散歩に来た人が休憩したりすることができます。利用者は、屋内ではゆっくりと、屋外ではカジュアルに食事ができます。誰もが気軽に楽しく食事ができる子ども食堂を目指しました。
お祭りという仮設的な風景を、常設である建築でどう実現するかに挑んだ意欲的な提案でした。自分でも屋台をやってみたくなりました。夜にだけ現れる出店が持つ仮設的な魅力を、運営のかたちまで含めて表現されているとより良かったと思います。
よくわからないことが起きそうなところがおもしろいですね。お祭りは一種のプラットフォームで、インターネット上でも、物理的なものでも、通常の店舗と違った不思議な店舗が出店される可能性を秘めています。どうすれば地域に潜在するおもしろい人がこの地域ならではの店舗を出せるかを想定することが大切だと思います。
とても楽しい提案でした。食事は祝祭である、祝祭は広場を要求する、という根源的な発想がストレートに表現されています。現在、多くの建築家やデザイナーは、人々が集まる場所を計画する時に、シンボリックな中心をつくることを注意深く避けますが、ここでは堂々と櫓が立っていることがおもしろいです。より先へ発展させるのであれば、この建築によって人々が何を祀っているのかを考えてみてほしいですね。