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佐藤淳賞
仲西風都
冒険的食堂 -想像して創造する自分の居場所-
Super Jury
羽根木公園にはプレイパークがあり、夕方、子どもたちは親の自転車に乗せられて帰っていきます。彼らに滞在してもらうには、子ども食堂が親子にとって寄る場所ではなく、居る場所となることが大事だと考え、食堂機能に留まらない、子どもにとって居心地よい空間を目指しました。
山を駆け上がる、頂上からすべり降りる、狭い空間に向かう、ジャンプしたくなるといった、子どもの潜在的・冒険的な本能を駆り立てることをねらいとしています。敷地を規則的に25に分割して、地形的な凹凸と構造的な凹凸の2層を組み合わせてポリゴン形状を形成し、狭い・広い、低い・高いなどメリハリのあるスケール感をつくります。屋根の素材は木です。
建物へは、北東側のプレイパーク方面、南東側の野球場方面、西側の住宅街方面など様々な方向からアクセスできます。
北東側から見ると山のような形状で、頂上から内部を覗きたくなる子どもたちをいざないます。南東部からは食堂の全景を確認でき、なだらかな下り坂によって通りかかる人が立ち寄りやすく感じます。南側のGLから伸びるなだらかな屋根は、ご飯を食べたり本を読んだり、使い方は利用者の想像力に委ねられます。
平面
屋根伏せ・断面
食堂は隠れ家的なスペースに位置します。調理場などの機能的な場は必要最低限です。人々はテーブルだけではなく、階段や屋根の上で食べることもできます。既存の枠組みに捉われない新たな食堂のあり方を試みます。
室内は開放的な場と閉鎖的な場が交錯し、不規則な開口からは光が差し込みます。進むにつれて暗く、狭くなる洞窟的な空間は子どもたちを刺激し、落ち着きたい時にはゆっくり過ごせる場所になります。
子どもの冒険的な本能を駆り立てること、利用者の想像力に委ねた空間から新たな食堂のあり方を模索すること、このふたつから「冒険的食堂」と名付けました。
造形に挑戦する姿勢が評価できますし、断面図のプロポーションもバランスが良いと思います。一方で開口には必ず手すりがつくので、「冒険的」というコンセプトと乖離してきます。地形と造形が融合する開口のあり方、スリットや素材なども検討するとより良かったと思います。
比較的大きな模型をつくる過程で、凹凸のある多面体を構成する板材の強度もスタディできていると思います。材料となっている木は並べ方で方向性が表れますので、将来的にはそうしたことも考えてみてください。
ダイアグラムをつくって状況を誘発する手法に用いるというプロセスに好感をもちました。そのうえで、地形の上下、屋根の上下、それぞれ25分割した板の用い方をさらに精度高く個別に検討すると、自分のイメージを超える建築に辿り着けるかもしれません。