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駿優賞
村上巧
船宿は建築のきっかけに
卒業設計
神田川の浅草橋に建っている解体されることとなった一軒の船宿。もう現在の場所にはいることのできない船宿をきっかけに、新しい建築の可能性を考える。船宿を4つの部分に分け、それぞれを他の敷地へ移設し機能を転用する。ある敷地へやってきた船宿をコンテクストとし、自立することのできなくなった船宿に応答しながら、あるいは生じたエラーを調停するように建築を考えた。船宿をきっかけにはじまる4つの建築を提案する。
1. この作品が生まれたきっかけは?
まちを歩いているときにこの船宿と出会いました。自分が今まで見たことのないその特殊な建築に興味を惹かれてリサーチを始めましたが、船宿が閉業し解体されることになったと知り、写真や図面、模型によってその価値を言語化しようと、さらにリサーチを続けていました。船宿は解体されるため、もう現在の場所にいることができないという前提のもと、移設することでなにか設計の可能性を提案できるのではと考えました。卒業設計では4つの建築を提案しましたが、他の設計の可能性もまだまだあると思っています。
2. 建築学科を志望した理由は?
ものをつくることが好きで、大学には建築学科という場所があると知ってから、漠然と建築を学びたいと変わらずに思っていました。
3. 今後の抱負は?
自分が興味のあることに向き合っていきます。
卒業設計/2024年度
Q.この船宿はすでに解体されていて、その敷地に新しい構築物を建てたということか。
▶︎この場所には船宿がいくつかあり、そのうちの1軒が閉業して解体された。閉業して機能を失ったときに解体されるのではなく、この建築を部分に分けて、それぞれを異なる敷地に持っていき、それぞれの場所でまた始まるような機能を考えてこの建築をつくった。
Q.それぞれの敷地は全て川には面していないということか。
▶︎面していない。川に面していないことが重要だと考えている。
それぞれの建物のどこが接道しているか教えてほしい。道が川に見立てられているように感じる。
▶︎そのように設計しました。
元船宿が新たな別の敷地に行ったときにどのようなメリットをもたらすのか。
▶︎私は船宿の持つ豊かな空間に魅力を感じている。河川上に建っていることや、屋形船の乗り降り場や事務所になっているという特殊条件を持つ建物が異なる敷地に来たときにそれを意識して設計せざるを得なくなるし、この船宿に繋がる空間が生み出せたらいいと思っている。
空間を持ったまま移動しているのが面白い。船宿が新しい土地に移動したあとにまた移動するという可能性を考えていたりはするのか。
▶︎船宿が一旦移動したあとまた外部に流出し、痕跡を残した建築が残ることも考えている。
護岸とか水面のようなエッジにのみ立ち上がる稀有な存在。だから単なるエレメントとして捉えるよりも、動く水面に応答している建物だから新たなエッジに再インストールするというほうがより魅力的だったかもしれない。持ち込んだ場所性にもっとこだわりがほしい。
川面と護岸の見たてのバリエーションがどのくらいあったのか。
▶︎床部分を支えている線上の部材がピロティのような空間になったり、住宅部分になったりしていて、様々な空間を生み出している。船宿のもってる性格を4タイプに分けて、それぞれかなり異なる性質で表現。この船宿が敷地にやってきたときにそれぞれどういう可能性があるかということを考えたかった。
護岸に建っているから仕方なくこの形になったものが、新しい敷地にいったときに今度はその建物が制約となって、それに適応させるように設計をした流れが面白いと思うのだがこの認識であっているか。また、この設計を通じて、今後に繋がる発見などがあれば教えてほしい。
▶︎その認識であっている。床が既にある状態で、壁などのマテリアルを決めていったのでそれは今後も生かせると思った。
船宿という機能は関係なく単なる構築物として捉えているとのことだったが、本当にやりたかったことはなんなのかが気になる。
▶︎自分が設計する上で、純粋に面白いと思うものをリサーチしはじめて、船宿をきっかけにしたらどういう建築が設計できるかということを知りたかった。