SELECTION
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秋吉浩気賞
矢島琴乃
羽根木食堂
Super Jury

家庭内や経済的に問題を抱えている子どもたちだけではなく、誰でも気軽に立ち寄ることができる、地域の拠点としての子ども食堂を考えました。
羽根木公園という名称から着想を得たこの建築は、鳥が自然と大きな木に集まるように、人々を敷地の中に引き込みます。

 

木の根を張り巡らせたような構造体は、敷地全体に広がっていて、登ったりくぐったりして遊んだり、テーブルにしたり、座ったり、寝そべったりもできる多様な場所をつくり出しています。
構造体はすべて同じ木で構成されています。
内部空間が必要な食堂はガラスで覆い、公園内で唯一靴を脱いでくつろげるような空間になっています。食堂は公園のどこからでもその様子を垣間見ることができます。

動線計画としては、構造体の高低差やカーブを調整することで、どこを通っても異なる用途を通り抜けるようになっています。毎日違う動線を選んだり、様々な人々がすれ違うように設計し、利用者が何度も訪れたいと思うような、ワクワクする空間をつくり出しています。

公園の記憶が残る既存の遊具はそのまま利用しています。敷地全体に張り巡らされた構造体は、すべてがつながってひとつの大きな根になっていて、人々に孤独や寂しさを感じさせないような空間を提供しています。

講評
西田司

室内の子ども食堂だけが食事できるスペースのように見えますが、窓から食事を受け取り、木の根の構造体を使って食べる場所を見つけられるというようなストーリーもあり得るのではないかと思いました。食堂という定義を広げて、例えば自宅からお弁当を持ってきてピクニックする人たちともコミュニケーションしながら食事ができるような風景が想像できます。

秋吉浩気

僕の知り合いにも子ども食堂を運営している方がいますが、その方によると子ども食堂は単に食事をしに来る場所ではなく、学校や家庭から逃れられる一種の「駆け込み寺」として機能しており、包容力を持っています。この提案では、食堂の機能が最小限に抑えられ、ランドスケープとして色々な場所ができているのがおもしろいと思いました。周囲に別の機能を持った室内空間を計画するとより良かったかもしれません。木の構造体の設計プロセスも気になりました。1枚の板から道をくり抜くようにして設計されていて、模型が先、図面が後というつくり方が興味深かったです。

石川初

敷地全体をのびのびと使っていて、造形も大胆ですごく良いですね。子どもたちは大人が想定した用途を壊し、休んだり遊んだりしながら食べたりもしますが、そうした想定外の風景を生み出すポテンシャルを持っています。構造体によってゾーニングがなされているように見えますが、それぞれのゾーンを横切るように構造を計画する可能性もあったのではないかと思いました。