SELECTION
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卒業設計選奨
相川円香
湖辺に流れる豊かな1日
卒業設計

茨城県霞ヶ浦の水辺に建つ建築を提案します。かつてこの地域は水上交通や運輸業が盛んで、人々の暮らしに適した居場所でした。しかし、埋立てによって陸と水辺の関係が分離され、水運も途絶え、水辺に人々の居場所はなくなってしまいました。そこで、再び湖上の活動に目を向けたウォーターフロントセンターを提案します。
湖と暮らしの原風景を未来に残すために、湖辺に沿って建物を配置し、建物間に運河を通して、その上に舟橋を架けます。運河では移動図書館としての船が運航されています。舟橋があることで、陸の建築と水辺の建築を行き来でき、ここにしかない空間となります。

運河を挟んで3棟の建物をL字状に配置し、それらをつなぐようにブリッジを架けることで、桟橋を通る観光客からブリッジが賑わう様子が見えるようにしました。

内部には子どものための親水空間を設け、スラブレベルを水面近くに設定することで、子どもたちが水を間近に感じられるようになっています。また、遠くからこの空間を見ると、子どもたちが水面を走っているようにも見えます。離島のようになっているエリアには3階から階段でアクセスし、地域の学生が湖上で体験学習を行うことができます。
建物をつなぐブリッジでは、3階にあるカフェやマルシェで買ったものを食べながら、橋の密集する様子や、舟橋の賑わいを眺めることができます。

この建築群のポイントは水辺空間だけではなく、5階の自転車のジャンクションによってサイクリストの動線を演出しています。サイクリストはブックコーナーや会議室、展示空間、2階のシアターを見ながらこの建築を通り抜けていきます。従来交わることのない自転車空間と歩行者空間が混じり合う空間を積層させています。

建築のシルエットとしては、スラブやデッキを交互に重ね、湖に浮かぶ雲や朝霧のようなものを表現しました。そして縦動線であるスロープや大階段は建物の外周部に配置することで、雲の中をぐるぐると舞い巡るようにしました。

最終的には、湖全体を巡るそれぞれの観光スポットに桟橋が計画されていき、この建築が観光客や地域住民を引き込み、循環する霞ヶ浦のネットワークの中心となっていきます。

講評
富永大毅

霞ケ浦の新しい生態系を生み出し得るおもしろい提案だと思います。船や自転車などの観光的な要素だけではなく、第一次産業に携わる地元の人も運営に関われる提案になるとより良かったと思います。船の利用方法については移動図書館だと少しもの足りなく、この地域にある人と物の何を動かすと活性化するのか、もう少し考えられるとよいです。

廣部剛司

水辺が内水面で、海ではないからこそ、水とこれだけ近い関係があることがおもしろいと思います。図書館は既存の船を転用するのではなく、ひとつの建築として船と建物の中間ぐらいの規模で設計した方がおもしろかったのではないでしょうか。

雨宮知彦

建物を離して配置し、細い隙間に船の動線を設定しているところがうまいと思いました。タイの水上マーケットが思い起されます。舟橋と水の距離をもう少し近づけて密接に関係させるとより良くなると思いました。