SELECTION
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伊藤綾香
Link -諸室・人々・内と外の繋がり-
Super Jury

羽根木公園には野球場やテニスコートなどの大きな施設が、木々を挟んで散在しています。そこで、その形式に倣って、ひとつの大規模な施設を計画するのではなく、コンパクトな建築を組み合わせるような計画をしました。
地域における憩いの場として子ども食堂を設計することで、食堂という機能を全面的に主張するのではなく、開けた空間に食堂が併設されているようなプランにしました。そうすることで、誰もが訪れやすく、子どもたちが差別を受けないように配慮しました。

建物全体が大きな遊具やベンチとしての機能を担い、公園に訪れた子どもたちや地域の高齢者たちが安心して憩える場になるように考えました。建物は3方に開いたコの字のユニットを組み合わせて構成し、各用途や動線の関係を踏まえて必要となる壁などを付加しつつ、ひとつの建築をつくっています。
食堂スペースの床の高さは大人が座りやすい40 cmとし、縁側のような空間になっています。この位置からさらに一段上がったスペースは、高さを30cmとし、子どもが座りやすいようにしています。また、テラスの高さは100cmとし、よじ登ったり、外階段からアクセスもできるようにすることで、子どもに選択肢を与えています。訪れたそれぞれの人が居心地の良い場所を見つけられます。

 

平面

断面・立面

建物は地面から少し浮かせることで、反対側にいる人の気配を感じることができ、子どもたちは潜って向こう側に行くことができます。

周囲の地面には板を配置し、ピクニックや子どもたちが缶蹴りをする場所などとして利用できます。東側の公園からの利用者と北側の管理者の動線は明確に分けて計画しました。建物へのアプローチを公園通路側に寄せ、公園から人々が立ち入りやすくしています。

高低差の違うコの字のユニットを組み合わせることで、一見して見通すことができない、居場所を見つけたくなるような空間をつくり出しています。

講評
西田司

敷地形状を踏まえて、各方角に対してシークエンスが考えられているのが良いと思いました。広い敷地の真ん中に小さい建物を寄せながら、それぞれの面のふるまいがおもしろいです。コの字型が重なっている部分がなにかの行為のきっかけになっていることをもっと描けると良いと思います。

石川初

コの字型のユニットは、プレファブリケーションで実現できそうな形態で、かわいらしく、 IKEAの家具のような開かれたシステムを想像させます。積み木のようなものを用意して、子どもたちとワークショップをしながら全体像をつくっていくことも可能だと思いました。段差もさりげなくて良いです。敷地に点在している飛び石のようなゆるやかな場所は、例えばキッチンガーデンなどとして、子どもたちが関われる環境をつくることもできたと思います。

秋吉浩気

コの字型のユニットの重なりにおもしろさを感じました。例えば茶室の躙口は、狭い入口を潜ることで、内部の広がりを認識できるようになっていますが、ここでも具体的な出来事や空間体験を想像しながら設計できるとより良かったと思います。