SELECTION
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佐藤光彦賞
大森そよ風
二面性
Super Jury

居住者の設定は、子どもふたりの核家族です。子どもは既に就職していて、それぞれの生活リズムがあります。
みんなで食事をし、団欒をするという従来の住宅で想定されるような家族関係は、子どもの年齢によって変化していきます。ここでは、家族の一体感だけではなく、個々人の生活の差異を受け入れた住宅をつくることを考えました。

 

この住宅にはカフェが併設されています。家族とカフェ利用者を等価な個人として扱い、住宅の領域に座席を配置し、シェアハウスのような空間で暮らす計画です。関係性が希薄な家族でも、カフェ利用者を介して会話が生まれることを想定しています。家族のみが利用する部分と、家族とカフェ利用者の両者が利用できる部分、状況に応じてカフェに開くことができる部分という3種類の空間を計画しました。

2階平面

1階平面

地階平面

個室には、従来のように玄関からのアクセスと、カフェを経由して入る動線を設けて、その時々の状況に応じて選択できるようにしています。

講評
西田司

私たちがかつて設計した「ヨコハマアパートメント」(2009)は、敷地の中に他者が入ることができるような、不確定な要素との出会いを考えました。その時に重要だったのは、専有部と共用部の距離感やつなぎ方です。ドアを開けるとすぐにカフェの空間に出くわすよりも、例えば室内側に窓を設けて、向こう側の様子を確認してから出られるなどの工夫がデザインできると思います。

石川初

ファミリー、ゲスト、カスタマーを等価に扱うという発想はラディカルで、ヤバさを感じました。提案では、家族とカフェ利用者は金銭取引の有無によって区別されていますが、それさえなくしてしまい、家族も食事をするためにはお金を払う必要があるといった設定にすると、より強固なものになると思いました。経路に選択肢があるというプランニングもおもしろいですね。

秋吉浩気

竣工写真に見えるほど模型の完成度が高くて驚きました。現代では、スマートロックなどのテクノロジーによって、ドアひとつで誰を入れるか入れないかを決めることができます。情報技術によって部屋という単位以上に細かな単位を設定して住宅を構成していく可能性があるので、シェアハウスではない、新しい家のあり方が提案できるかもしれません。