SELECTION
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最優秀賞
髙松えみり
やなか こども基地
Super Jury

家族構成は、学童を営む父、イラストレーターの母と、2歳と7歳の子どもで、住宅内で学童が営まれています。子どもと地域住民の関係、墓地との関係、学童と家族の空間や時間の関係という3つの大きな課題に取り組みました。
谷中は自然・芸術・文化の魅力で溢れ、下町ブームに伴い観光地化が進む一方で、観光に関わりのない人たちにとっては地域とのつながりが希薄化しつつあります。そこでこの提案では、子どもたちに街のことを知ってもらい発信してもらうことで、地域社会の交流をつくり出すような住宅にできないかと考えました。
学童のプログラムとして街歩きを提案します。地域の商店街などの行事に、子どもたちと立ち寄り、街のあり方を学びます。その後、学童内で話すことで話題を共有し、さらに家族の会話に持ち帰ることも想定されます。子どもたちは、また街歩きをして情報を吸収し、発信することで地域を循環します。学童が地域の基地となり、家族と地域をつなげ、観光地化に負けない地域づくりが実現できると考えました。

街との接点となる空間を道に沿って計画することで、地域住民との交流を増やします。人通りの多い南側に子どもが学んだことを共有できるギャラリーを配置しました。ギャラリーは東側まで伸びて、お墓の目隠しともなります。交通量の少ない西側には子どもたちが地域の人と交流のできる縁側を設置します。

2階平面

1階平面

立面・断面

この建築は住宅・子ども・谷中という3つのスケールで設計しています。子どもスケールはロフト、出窓、ピクチャーウィンドウといった要素として計画し、特に子どもしか入れない「こども道」は街と住宅のバッファーになっています。谷中スケールでは、低い建物が並ぶ街に合うように3階を道から遠ざけて計画し、加えて街に見られる路地のような空間を建物内に配置し、谷中の街を感じる住宅を目指しました。このふたつの大小のスケールによって住宅スケールが変容し、活動の余白を残した住宅になります。

学童と住宅は断面的に緩やかに仕切られています。ファサードの格子の目の細かさを変化させることで、街との距離を調整しました。学童の空間は、2階のロフトや外壁に設けた格子から柔らかく光と風と緑を導きます。住宅は住人の子どもの成長に応じて、学童空間の一部を住宅スペースとして転用できるように設計しています。

講評
西田司

外観に表われているように、学童の空間が階段状に立体的に解かれているのがとても良いと思いました。複数ある外部のあり方もおもしろいですね。学童、住宅、街を分ける話だけでなく、混ざり合うポイントのこともさらに聞いてみたかったです。

石川初

巧みな計画で、内観パースも良いですね。子どもを地域に放つというアイデアは、養蜂のようです。街を知ってもらうためには、谷中に多く存在する墓地を隠すことなく、例えば子どもが摘んできた花をお墓に供えるような行為や風景を想定しても良いと思いました。

秋吉浩気

観光的な観点への批評を感じてハッとさせられました。複雑さがあり、どのようなツールを使って検討や設計がされたのかという興味を持ちました。設計過程もプレゼンテーションに入れることで、この計画をより他者に対して伝えやすくできると思います。