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桜建賞・非常勤講師賞(高橋堅)
長谷川侑美
N子的“私”小説ー変わっていく私と住まいー
卒業設計
「家」は、住まい手の人生や心情を投影する媒体である。
住まい手が人生を振り返り、まるで私小説のような自由さで家を妄想し、感情そのものを空間化していく改修過程の提案である。固定化された家と住まい手の関係性を問い直し、新たな建築の見方を発見する。
1. この作品が生まれたきっかけは?
建築を学ぶ前から「家」が好きで、卒業設計は絶対に家を題材にすると決めていました。そして、人々が関わる建築の原点として、家と住まい手の新しい可能性が問えないかという思いが強くありました。この作品に繋がった1番のきっかけは、指導してくださった山中先生の「頭の中での妄想に振り切ってもいいのでは」という言葉だと思います。本提案の主人公であるN子と同じように、私の中の家に対する概念が覆り、止まっていた手が動き始めました。
2.これまでやっておいたほうが良かったと思うこと、もしくはやっていて良かったと思ったことは?
私がやっておいたほうが良かったと思うことは、人に頼るということです。卒業設計は自分一人だけでは絶対に完成できないもので、アドバイスをもらったり、作業を手伝ってもらったり、振り返ると沢山の方々にお世話になりました。私は最初、先輩方や周りの同級生に自分から意見をもらいにいくことがなかなかできず、1人で黙々とやろうとしていました。しかし、人に話したり、自分とは違う人の意見を聞いたりすることで、客観的に思考できることに気付き、もっと早くから、たくさん自ら行動すべきだったと感じました。
3. 今後の抱負は?
卒業設計では、感情と建築について、導入的に考えました。自分は建築とヒトとの関係性について興味があると改めて感じたので、建築の感じ方や感情との対応等について大学院で研究していけたらと思っています。そして将来は、建築を学んでいない人々にも「この空間なんかいいな」と思ってもらえる建築を生み出せる人間になりたいです。
卒業設計/2023年度
建築じゃないのに建築的用語を使ってビジュアルを作っている点に価値があるような気がします。建物を切って動かしていると思うのですが、これをどうやってまだ建築であると言うのか、長谷川さんの思想が知りたいと思いました。
頭の中にある建築なのかなと思います。フィクションにするのはずるいのではという意見もありますが、フィクションにすることで、現実味から脱皮し、建築が自由を帯びるともいえます。実際にこの建築ができたときにN子さんがどういう感情になるのを目指しているのか、ゴールはあるのか。
普通のリノベーションではなくて、思ったことがどんどん加速して重力を排して全然違うものに変化していく手続きはアートだと思いました。すごく面白かったです。
ひとつの演劇を見たようですごく楽しかったです。例えば、キッチンへの足取りが重いというようなことを建築で表現していくことは、私たちが居心地のいいキッチンを作ろうと思ったときに、居住者の距離感やどの配置が便利かを検討する際の練習になると思います。居心地の悪さを表現できれば逆説的に居心地のいい住宅も同じ手法で作れるなと。
この卒業設計は長谷川さんにとってラブレターみたいなものだと思うので、おばあちゃんがどう感じるかを考えると、エピローグの書き方や模型の見せ方はもう少し検討したほうが良いと思います。