SELECTION
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桜建賞
江村菜々美
「塵が積もる。みちとなる、」―資源の自律的循環が導くケニアスラムの再生計画―
卒業設計

ナイロビの強制撤去後のスラムで生まれた自律的な資源循環に着目し、それを支える建築の提案です。ゴミ・水・食といった日常的な循環を対象に、初期段階では機能を集約した拠点を計画し、その後段階的に分散・自立化させます。住民が関与する小さな循環拠点を点在させ、人と資源の流れからみちを編成することで、分断された都市に一体感と持続的な運営基盤を生み出す計画です。

1. この作品が生まれたきっかけは?

学部3年時に、横井先生や井本先生等と共に、ケニア・ムクルスラムでの建設プロジェクト「DONATION ROOF」に参加しました。設計や現地での建設を通して、自分の無力さを痛感すると同時に、この場所で建築に何ができるのかを考えるようになりました。特に、日常にあふれるゴミの問題に対して、建築の力で関わる方法を模索したことが出発点となっています。

2. これまでやっておいたほうが良かったと思うこと、もしくはやっていて良かったと思ったことは?

学部3年までは、机上の設計だけでなく、学外ワークショップや同期と団体を立ち上げた建設活動など、積極的に行動したこと、そして、設計・建設・使用 に数多く携われたことが大きかったと思います。

また、卒業設計では、自分の軸を明確に持ちながら、同期と多くの議論を重ねたことが思考の深度に繋がったと感じています。

 

3.今後の抱負は?

東アフリカをはじめとした、現在大きく変化している地域で活動する建築家になりたいです。建築の力を信じながら、その土地に暮らす人々と協働し、建築の力で何ができるのかを模索し続けたいです。

講評
近藤

とても合理的で説得力がありましたが、建築のデザイン的側面について伺いたい。

▶︎実際に現地で見学し、部材の転用がされていたので、住民があとから手を加える余白を残すことを意識しました。また、“集合”と“点在”の際で各建物がそれぞれ隣接する際にどのように関係するかということも考えています。例えば、製材所と家具屋が隣り合っていて、製材所で出た廃材を使って家具を作るような関係性です。それらが、点在したときに建物の高さを少し高くして目立たせるようなこともしています。

 

金子

資源と食と水について3つの循環と説明がありましたが、食と水の循環について説明の補足がほしい

▶︎水については雨水を貯めて生活用水として使うということを考えてます。食については、ここはいわゆるゴミ山で、動物たちが、そのゴミを食べて、その動物を人間が食べるという過程を循環していると捉えています。

富永

元々のスラムが、再構築される際にどれぐらい生活が変わっていくのか教えてほしい。

▶︎元々のスラムの生活は無秩序な状態で、関係性もままならないです。資源を媒体として循環を起こしているので、その資源を通して協力関係が生まれることは、住民同士のより良いコミュニティを作ると思います。

通常の都市計画ならば、マップなどを持って施設を訪れたりすると思いますが、この場においてはシンボル性や人間の視点から建物を認識して町が計画されているように感じる。その辺のサインやシンボルなど、デザインについて留意したことがあるか。

▶︎ランドマーク的な存在になるもの、ならないものの2種類を考えています。まず、ランドマーク的なものはずっと中心地点にいます。焼却炉や浄水機能という大きな機能などは屋根を大きくしたり煙突を作ったり象徴的なものを出しました。一方、点在した生活レベルに使われるものは住人に対して異物と感じられないようにしました。

下川

通常の都市計画と違うアプローチでとても面白いと思う。最初に主要な施設をまとめて開発して、それをあとで点在させていく。そのひとつひとつのシンボル性を意図的に弱くしている点が特に面白い。スラムではなく街になっていく様子が今後も気になる。

高橋

単管パイプで作ったというのがポイント。現地の方がその単管パイプを使って彼らなりに変容させていく感じが出せたらもっとよかったかなと思うが、それにはデザインがもう少し必要だ。ハードコアな感じがする。

▶︎デザインに関してはまだ改善の余地があると思っています。

中山

発表者の中で唯一社会システムを提案していたのは江村さんだけですごく良いと思う。潜在するネットワークが元々ある中で提案は難しい。その中でリサーチして根拠をもって空間をつくっていったのがわかる。ランドスケープや道などを提案したくなると思うが、それをしなかったのはなぜか。

▶︎最初は道を提案しようと思っていたが、一旦強制撤去が起きた更地はまっさらなキャンパルのようで、そこに線を引くのは根拠も何もなく難しかった。点と点を作ることによって線が思い浮かべられて道ができるのかもしれないと思い、このような提案に至りました。

横井

多分この場所はいろんな欲望のまま、埋まっちゃうと思う。点在したときに建築をみると、今は軽やかだけど多分周りをスラムが囲んで外観は見えなくなっていくと思う。それでいいし、そういう風景があの場所だと起こるだろうなと。

卒業設計/2025年度