LECTURE

Super Jury 2025 ショートレクチャー
畝森 泰行(畝森泰行建築設計事務所)
REPORT

僕は横浜国立大学を卒業して、西沢大良事務所で修行しました。西沢事務所の隣には本日司会を務められている佐藤光彦さんの事務所があって、当時から二人の建築家に接することができたのは幸運だったように思います。

 

僕は大学院を休学して西沢事務所に入り、そこで集合住宅を1件担当した後、復学して論文を書き、もう一度事務所に戻りました。いくつかのプロジェクトを経験して30歳のときに独立したのでもう16年が経ちましたね。当時佐藤さんと西沢さんが隣同士に事務所を構えていたのと同じように、僕も今別の建築家と事務所をシェアしています。

 

東京の浅草橋にある築60年くらいの古い建物を1棟借りてリノベーションしたのがBASEです。金野千恵さん(teco主宰)とシェアしています。5階建の建物で、屋上も含めると6つフロアがあり、1階は目の前の道路に対して広くオープンにできる多目的なフロア、2階は窓サッシを全て外した屋根のある屋外空間。3階と4階をそれぞれの事務所で専有していて、5階は共有のライブラリーです。通常は2フロアづつ専有して1階のみをシェアすると思うのですが、専有部分をコンパクトにすることで、性格や環境の異なる共有部分を増やしているのが特徴です。

 

これによって季節や仕事の状況に応じて共有フロアを使い分けています。他にも、1階で子供たち向けのワークショップをしたり、建築家によるレクチャーや展示などもしてきました。浅草橋はお祭りも多いので、1,2階を担ぎ手さんの休憩所に活用したこともあります。いろんな人を巻き込みながら、地域のなかで建築を考えていくことを心がけています。

 

僕の自邸も紹介します。4年前に僕の奥さんの妹家族と一緒に建てた二世帯住宅です。この建物は細長い建物を2棟並べて、間に路地をつくっています。この路地から光を取り入れたり、お互いにコミュニケーションをとったりしています。屋根や床の高さを上下させることで視線がぶつからないようにしていて、一方のリビングがある場所には地上から1m上がったテラスをそれぞれ作っています。

 

また、テラスの下は半地下の室内になっていて、たとえばアトリエ横には半地下の水廻りを設けています。明るい場所と暗い場所が隣り合っているのですが、扉や壁で遮ることなくずるずると繋がるような断面計画です。天井の高さもそれぞれ異なるので、視線の抜け方も様々ですね。

 

僕の事務所や自邸では、それぞれの家族やチームが認識する範囲を建築によって歪めることができないか、そういう輪郭の変化によって、自然も含めた他者との関わりをつくれるのではないか、ということを考えています。

須賀川市民交流センター(福島県/2019)

こちらは2019年に完成した福島県須賀川市にある市民交流センターです。東日本大震災の復興プロジェクトで、図書館、公民館、子育て支援などが入る14,000㎡ほどの複合施設です。当時40歳以下で新人賞をとった若手建築家と組むことが条件のプロポーザルコンペで、石本建築事務所から声をかけられて一緒に参加しました。

 

複数の床がずれながら上に重なって、軒下を縁側のような半外部空間にしたり、子供たちの遊び場になるテラスなどを作っています。内部も床がずれているので、色々なところに吹き抜けができて視線が抜けます。また、1階は東西に高低差のある100mくらいの長さのある大きなエントランスですが、それらをスロープ状に繋いで通り抜けできる街路のような空間も作りました。

 

主な機能は図書館ですが、施設全体にその本を配置したので、14,000㎡全部が図書館ともいえる建築になりました。、音楽の活動やものづくりの活動などと図書館がもつ情報とが結びつき、機能を超えて混ざりあう関係が生まれています。

 

最近完成したのが岡山県にある奈義中学校です。体育館とは別に10m四方の小さな屋内広場を校舎の中心につくりました。合唱の練習ができたり、それを近所のおじいさんたちが聴きにくる風景も見えて、生徒たちにとっても授業以外のいろんな活動や地域との関わりが生まれています。この屋内広場が動線の結節点にもなっていて、昇降口や体育館、北側にある図書・ランチ棟、東と南の教室棟などへ接続しています。木造の教室棟も天井の高さを色々変えていて、クラス単位の学習だけでなく、たとえばグループ学習や友達との会話、1人で休んだり読書する場所など、様々な単位、スケールをもつ学校を考えました。

畝森 泰行