研究紹介
免・制震構造研究室の阿久戸信宏先生が考える“建築の面白さ”
by SHUNKEN編集部

■ 建物には「揺れ方の個性」がある

同じ地震でも、戸建て住宅と超高層ビルを比べると、建物によって揺れ方が異なるのはなぜでしょうか。その理由の一つは、建物ごとに揺れやすいリズムが異なることにあります。このリズムで1往復するのにかかる時間が「固有周期」です。地震の揺れにもさまざまなリズムが含まれ、建物のリズムに合うと「共振」によって揺れが大きくなることがあります。このように、建物の固有周期と地震の揺れの特徴との組合せによって、建物の揺れ方は変わります。

地震から建物を守る方法は、建物を丈夫にして地震の揺れに耐える「耐震」だけではありません。「ダンパー」という装置で地震の揺れのエネルギーを吸収する「制振」や、地震の揺れを伝わりにくくする「免震」もあります。駿河台校舎の「タワー・スコラ」も、免震と制振を組み合わせたハイブリッド構造です。建物ごとの特徴に合わせて、揺れに耐えるだけでなく、揺れを制御する仕組みを取り入れることで、地震に対する建物の安全性を高めることができます。

 

タワー・スコラの免震装置

タワー・スコラの制振ダンパー

■ 建物の「揺れ方」を知り、「守り方」を考える

私は、地震や風による揺れから建物を守るために、振動の理論をもとに、免震・制振構造の部材実験や、建物の揺れをシミュレーションできるソフトを用いて、制御システムの研究開発に取り組んでいます。

これから起こる地震がどのような揺れになるかを、事前に正確に知ることはできません。ある一つの地震で揺れを抑えられても、それだけで十分とはいえません。どの程度の強さで、どのような特徴をもつ揺れを想定し、何を重視して建物を守るのか。そのためにどの装置を選び、どのように組み合わせれば効果が高いのか。こうした仕組みを考えることが、研究の難しさであり、面白さでもあります。さまざまな条件で効果を確かめ、よりよいシステムの構成を探っていきます。

考えた仕組みが実際にどう働くのかを確かめるため、シミュレーション解析とあわせて、実物の部材を使った実験を実施することを重視しています。部材の振る舞いをシミュレーション解析だけですべて再現できるとは限らないからです。装置が動く様子を間近で見て、データを読み解く。事前のシミュレーション解析と一致すれば、理論と実際の現象がつながる手応えがあります。予想と異なる結果からは、新しい問いが生まれます。実験とシミュレーションを行き来し、その違いの原因を考察することも研究の楽しみです。

建物の「揺れ方」を知り、「守り方」を考え、理論と実験で確かめる。アイデアを建物の安全につながる技術として形にして実現できることは、技術者としての喜びだと思います。だから建築は面白い。

免震装置(積層ゴム)の部材性能確認試験

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・研究室:免・制震構造研究室

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