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建築史・建築論研究室の田所辰之助先生(理工教授)が考える“建築の面白さ”
by SHUNKEN編集部

分野を超えて対話し、多様な切り口で建纂を見る

ときにシンポジウムや講演会、また展覧会の企画などに関わります。大学の垣根を越 えて、また美術史や社会学、言語学など建築外の専門の研究者たちと、共通のテーマのもと対話に取り組みます。研究とは、なにか「正解」があるようなものでもありません。特に建築史の分野では、歴史上の事実は不変でも、社会や後世に与えた影響を考えたとき、その意味合いはさまざまに変化します。どのような切り口から建築を見つめ直すか、その切り口の多様さが、建築史の世界を豊かにしていきます。シンポジウムや展覧会は、そうした建築の多彩な姿を垣間見れる、まさに恰好の場となるものです。

連続シンポジウム「分離派建築会誕生100年を考える」第7回(2019年10月26日、 東京都市大学)のポスター。本年10月10日よりパナソニック汐留美術館で、2021年1月6日より京都国立近代美術館で、展覧会「分離派建築会100年ー建築は芸術か」が開催される。

「吉田鉄郎の近代-モダニズムと伝統の架け橋」展は、東京・大阪両中央郵便局の設計で知られ、日大でも教鞭をとった建築家・吉田鉄郎の足跡を振リ返る貴重な機会となりました。吉田の評価はすでに揺るぎないものですが、これまで知られてこなかった数々の図面から、吉田の設計活動の幅広さが浮き彫りになりました。

また、分離派100年研究会は2012年に発足し、8回の研究会と8回のシンポジウムを経て、「分離派建築会100年-建築は芸術か」展を本年、東京と京都で開催します。分離派建築会は日本のモダニズム建築のはじまりを画し、その歴史的位置づけはやはり揺らぐことはないでしょう。しかし100年を経ていまなお、その活動の意義や、日本の近現代建築への影響は、多様な角度から分析し直されています。

こうした対話の場では、歴史に、そして建築に切り込んでいくための言葉の力が大切になります。学生時代、皆さんもぜひ、建築をいかに語るか、その言葉を磨いていってください。歴史は、ガラスの切子細工のようなものかもしれません。魅力的な言葉で、さまざまな角度から切り込まれ、光を乱反射させて輝きを増していく。だから歴史は、そして、建築は面白い。

 

建築をいかに語るか、その言葉を磨いていこう

「吉田鉄郎の近代ーモダニズムと伝統の架け橋」展(2019年11月1日~2020年2月11日、 文化庁国立近現代建築資料館)の会場風景。オープニングにて、実行委員会の皆さんとともに。

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