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空間構造デザイン研究室 卒業生が考える”建築の面白さ”
by SHUNKEN編集部

実寸大の空間を体惑し、その場で思考を悩らせる

「安心するからですかね。実寸じゃなくてもいいんですけどね」 ある出張にて、木工事を担当する大エさんへ、「なぜ1/1(実寸図)を描くのか?」 と尋ねた際、こう返され、建てることへの意識の違いを痛感し、帰路の道中、実寸についてさまざまなことを考えさせられた。例えば、学生時代の習志野ドームやサマーセミナーといったワークショップを思い出す。発案したアイデアについて、設計から施工、解体まで携わるが、部材の重さに骨を折り、時間やコストに頭を悩ませたことが懐かしい。工程が進むにつれ、図面の密度が上がっていくことにも充実感を覚えた。ささやかな規模ではあるが、実寸大に触れることへの入門編として貴重な経験であった。

実務を積むようになってからは、‘‘実寸大の空間を体感し、その場で思考を巡らせることが、自分の引き出しを増やすものだ ’’という持論から、携わった案件や雑誌などで興味を惹かれた建築には可能な限リ足を運んでいる。また、そうすることで、設計時の想像や紙面からの印象を越える、新たな発見をすることも少なくない。これは建築の大きな魅力であリ、実際に建築 を訪れる醍醐味である。

2020年、世界中で感染症が祓厘し、人同土の物理的な距離が問われており、生活スタイルを見直す人も多い。自身も、出張は減り、ウェブ打合せも増えた。仕事の仕方も少しずつ変え ながら模索を続けている。

最先端の技術より頼れる人間の手

この状況下で施工中なのが、冒頭の大工さんにお世話になっているプロジェクトである。原木の形状をそのまま構造体とし、規格化された部材はほとんどない。2年前、設計始動当初の仕事は、伐採した原木を採寸することだった。それをCAD化、模型化しないと何もはじまらなかった。とにかく実物に触れて、寸法を追いかけた。アナログな手法ではあるが、最先端技術に頼るよリも現実的な方法だったと思う。

上棟後。 伐採した木を上下逆さまにして起こし、 傘をかける。

頂部束は手加工によるもの。 基礎から立上る柱は生えたままの形状。

 

もりなが・のぶゆき:1982年東京都生まれ。 2007年日本大学大学院理工学研究科博士前期課程建築学専攻修了。 2007~15年なわけんジム勤務。 2015年mono代表。

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