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Visit & Criticism 学生建築探訪 vol.14 古澤研4年生からのオススメ建築本
by SHUNKEN編集部

Visit & Criticism 学生建築探訪 From SHUNKEN 2020 Jul. vol.48 no.2

今回の建築探訪はお休みです。その代わりに、古澤研究室所属の7名の4年生たちから、オススメの建築本を1冊ずつ紹介します。無数に存在する建築本。どんな本に出会うかで、その後の人生をも左右するものです。ぜひ、興味を持った本は手に取ってみてくださいね。

 

リノベーションって「いつ」生まれたの?

『時がつくる建築~リノベーションの西洋建築史~』(加藤耕一/東京大学出版会/2017):最近、雑誌で「リノベーション」という言葉をよく目にする。僕を含め、この言葉が最近生まれたと思う人はたくさんいるのではないだろうか。しかし、西洋では古代から行われる当たり前の建築行為だった。これは西洋の歴史を紐解き、実は日本にもリノベーションの歴史があったことを発見する本である。(稲村浩成)

 

建築とは空間?プログラム?それとも…

『建築と断絶』(ベルナール・チュミ/訳:山形浩生/鹿島出版会/1996):空間・プログラム・断絶の3部からなる論集。チュミは建築の形態だけでなく、利用形態を捉えることの重要性を論じる。現代において形態と機能は断絶しており、その断絶にこそ可能性があるとしている。正直な感想は、とても難しく力不足を痛感した。しかし、新たな建築を捉える見方が得られる一冊である。何度も読み返そう。(久保開陸)

 

日本文化論から紡ぎ出す日本的空間とは?

『見立ての手法~日本的空間の読解~』(磯崎新/鹿島出版会/1990):日本的空間を磯崎新が、「ま」、「かつら」、「にわ」、「ゆか」、「や」、「かげろひ」に分けて解説。日本の時空間、美術的価値、宗教思考などのさまざまな要素も見られる。磯崎が手掛けた、展示会やコンペティションの視点もある。日本における、空間の美しさ、価値観を学べる本になっている。(田沼元)

 

 

ビッグデータで建築は都市は変わるのか!?

『シン・ニホン~ AI× データ時代における日本の再生と人材育成~』(安宅和人/News Picksパブリッシング/2020):「情報産業革命」と呼ばれるビッグデータとAIの時代の中で、私たち若者が声を上げて動くことの重要性を深く感じた。日本には他国の技術を取り入れ、新しいエコシステムを構築する「出口産業」の文化を活かした歴史がある。この文化を活かし、新しい時代を乗りこなすか飲まれるか。データを理解したクリエイティブな若者が、今何を吸収し、どう発信するべきかを考えるきっかけになるかもしれない。(佐藤玲菜)

 

市民の視点だから見える都市のこと

『アメリカ大都市の死と生』(著:ジェイン・ジェイコブズ/訳:山形浩生/鹿島出版会/2010):この著者は研究者でも建築家でもない。1961年、ニューヨーク市のダウンタウンの一介の住民は、都市の再開発の現状を前に近代都市計画を糾弾する。彼女の主張には特定の専門性はなく、詳細な観察を基に都市を多角的に捉えて問題を炙り出し、都市の本質を導く。彼女の攻撃は、世界で画一的になりつつある現代都市にも、今なお鮮やかだ。(平山茉歩)

 

美術にはどんな力があるのだろう?

『抽象の力~近代芸術の解析~』(岡﨑乾二郎/亜紀書房/2018):1周目、美術の歴史書。2周目、そのモノがそれである根拠を解析する解体新書。3周目、相反する概念の衝突(批評)から本質とは何か論じる哲学書。岡﨑の縦横無尽な論の展開は、共時性を示すことで、芸術を貫く一筋の真理を志向するためである。ということは、一冊の中を何度も反復して気づき、さらに周辺書籍を何冊も参照しなければ、この本はわからない。しかし、何が書いてあるか知ろうとするその過程こそ、この本の言わんとすることである。(森野和泉)

 

「ひとり空間」の多様な世界から見えてくること

『ひとり空間の都市論』(南後由和/ちくま書房/2018):本書は、都市の「ひとり空間」の諸相について、住まい、飲食店・宿泊施設、モバイル・メディアという3つの軸から述べている。特にモバイル・メディアについては、近年のSNSへの人間の振る舞いや、新たなビジネスサービスから「ひとり空間」を論じており、我々世代が共感する事柄が多い。新型コロナウイルスの影響によって「ひとり空間」が増殖している現代だからこそ、読んでほしい一冊。(西田美奈)

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