2026年09月18日から20日にかけてスイスとドイツの橋梁や大空間建築を、指導教員である宮里直也教授、鴛海昂助手と私たち学生2名で視察してきました。空間構造を学ぶ学生として、構造の仕組みと、それによって生まれる空間を現地で確かめる機会となりました。本記事では、視察で特に印象深かった事例を紹介します。
ザルギナトーベル橋(スイス)
サルギナトーベル橋は、ロベール・マイヤールが設計し、1930年に建設された鉄筋コンクリートのアーチ橋です。斎藤公男名誉教授が若いころに感銘を受けた橋でもあり、今回最も印象に残った橋梁の一つでした。
この橋は、アーチと橋面を側壁でつないだ中空断面を持つ3ヒンジアーチ構造です。深い渓谷に架かる姿を眺めると、薄いアーチと側壁が一体となった構成がよくわかります。

サルギナ渓谷に架かるサルギナトーベル橋

サルギナトーベル橋のアーチと側壁
MHPアレーナ(ドイツ・シュトゥットガルト/屋根部分1993年竣工)
MHPアレーナでは、観客席を覆う放射型ケーブル屋根構造を見学しました。内側のテンションリング(引張リング)と外側の圧縮リングを放射状のケーブルで結び、主に部材の引張力と圧縮力で荷重を支える仕組みです。
アーチ状の骨組と張力膜がつくる曲面が、屋根の軽やかな印象を一層際立たせていると感じました。また、屋根全体の構成と、膜や部材の取り合いなどの細部を併せて観察することで、普段の研究で解析や実験を通して検討している構造全体や境界部を、実際のスケールで捉えることができました。
放射型ケーブル屋根構造は、MHPアレーナをはじめ世界各地で複数実現されているものの、日本国内では実現されておらず、貴重な機会となりました。

MHPアレーナの観客席を覆うケーブル・膜屋根

MHPアレーナの屋根を支える部材と膜の取り合い
マンハイム多目的ホール(ドイツ・マンハイム)
マンハイム多目的ホールは、1975年の連邦園芸博覧会で建設された木造格子シェルです。格子を押し上げ、木材を曲げるPre-Bending(初期曲げ)という手法で曲面を形成する施工法が特徴的な建築です。
訪問時は保存修復工事が進められており、保存に取り組む団体の方に案内していただきました。建設当時の施工方法から、傷んだ木材の部分交換、接合部や屋根膜の修復まで、実際の架構を見ながら説明を伺いました。
修復の課題について質問すると、資金の確保や、火災時の安全性と文化財としての姿の保存を両立させることが挙げられました。優れた構造を残すには、修復技術に加え、安全に使い続けるための計画や、保存を支える人々の取り組みが必要と感じました。

マンハイム多目的ホールの屋根縁部の接合部

マンハイム多目的ホールの架構を背景にした集合写真
今回の視察では、材料や構造形式の異なる橋梁や大空間建築を通して、建築構造の仕組みだけではなく、その建築の歴史的背景を考えることができました。特にマンハイム多目的ホールでは、形を生み出す工夫と、それを次の世代へ引き継ぐ工夫の両方に触れることができました。現地で得た気づきを、今後の研究室活動や自身の研究に生かしていきたいと思います。
[修士2年] 空間構造デザイン(宮里・鴛海)研究室 [田中琢也・設樂源太]
【関連ページ】
・研究室:空間構造デザイン研究室
