2026年6月22日(月)から7月2日(木)にかけて、日本大学大学院理工学研究科博士前期課程建築学専攻2年(都市計画研究室(泉山ゼミ))の細矢瑞稀と指導教員の泉山塁威准教授が、アメリカ合衆国で海外調査を行いました。ミシガン州デトロイト市で開催された5th International Placemaking Weekに参加したほか、ワシントン州シアトル市のPike Place Marketを訪問し、カリフォルニア州サンフランシスコ市・デイビス市ではファーマーズマーケットの研究調査を行いました。なお、今回の調査は2025年の海外調査に続くものです。
International Placemaking Weekは、公共空間の活用や支援を行うニューヨークのNPO法人であるProject for Public Spacesが主催する、プレイスメイキング(人の活動やニーズに基づき、公共空間をコミュニティ中心の「場」として、計画・運営・維持するアプローチ)に関する議論を行うイベントです。2026年は6月24日(水)〜26日(金)にミシガン州デトロイト市で開催されました。
デトロイトでの議論と空間体験
5th International Placemaking Weekでは、プレイスメイキングの実務者等によるパネルディスカッションや学術発表がありました。各都市でプレイスメイキングがどのようなプロセスで進められているのか、また都市ごとの運営方法や、実現した空間の違いについて学びました。
また、デトロイト市の中心部には、プレイスメイキングによって活気のあるコミュニティ中心の「場」へと生まれ変わった公共空間が数多くあります。実際にまちを歩きながら、人を惹きつけ、居心地の良い場所となる空間にはどのような特徴があるのかを体感しました。

ミシガン州デトロイト市で開催された5th International Placemaking Week(筆者撮影)

プレイスメイキングによって生まれ変わったミシガン州デトロイト市のCampus Martius Park(筆者撮影)
ひとつのまちのようなマーケット:Pike Place Market
ワシントン州シアトル市では、Pike Place Marketを訪問しました。1907年に設立されたこのマーケットは、アメリカで最も古くから継続的に営業している公設市場のひとつです。
ここでは、運営組織であるPike Place Market Preservation and Development Authority(PDA)の方からマーケットの歴史や運営についての説明を聞きながら、マーケット内を巡りました。スターバックス コーヒー1号店をはじめとする店舗やレストランだけでなく、低所得者向けの住居や社会福祉プログラムも組み込まれており、マーケット全体がひとつのまちのようになっている点が印象的でした。

ワシントン州シアトル市のPike Place Market(筆者撮影)
周辺環境で変わるファーマーズマーケットの役割
最後に、カリフォルニア州サンフランシスコ市・デイビス市では、ファーマーズマーケットの調査を行いました。運営者へのヒアリングでは、マーケットをどのように現在まで続けてきたのか、地域とどのような関係を築いているのかなど、マーケットの運営について学びました。また、アクティビティスキャン調査(目視で人のアクティビティを抽出する空間調査)から、来場者がマーケット内のどこに滞在し、どのようなアクティビティを行っているのかを把握しました。あわせて、マーケットの店舗と来場者が滞在する空間との関係性についても調べました。
調査した2つのファーマーズマーケットは、商業地と住宅地という異なる環境で開催されており、その違いによって、地域との関係の築き方や空間にも違いが見られました。商業地で開催されるFerry Plaza Farmers Marketは、顧客に地元レストランのシェフが多く、地元ビジネスを支えるインキュベーター(新しい事業の立ち上げや成長を後押しする存在)としての役割を担っていました。一方、住宅地で開催されるDavis Farmers Marketは、地域の住民やコミュニティが訪れたくなる目的地性の高い空間であり、人々が集まる拠点となっていました。同じファーマーズマーケットでも、周辺環境によって果たす役割が大きく異なる点を興味深く感じました。

商業地で開催されるカリフォルニア州サンフランシスコ市のFerry Plaza Farmers Market(筆者撮影)

住宅地で開催されるカリフォルニア州デイビス市のDavis Farmers Market(筆者撮影)
おわりに
今回の調査を通して、プレイスメイキングが都市ごとに異なるプロセスで進められ、それぞれの地域に合った形で公共空間がコミュニティ中心の「場」へと生まれ変わっていることを学びました。
また、訪れたマーケットは、地元ビジネスを支える存在であったり、地域の人々が集まる拠点であったりと、周辺環境に応じてまちの中で多様な役割を担っていました。
日本では、マーケットは一時的なイベントとして捉えられることが多いように感じます。一方、アメリカでは、マーケットが地域の暮らしやビジネスと日常的に結びつき、まちに欠かせない「場」として根付いていました。日本でも公共空間の活用が広がりつつある中で、マーケットに限らず公共空間を地域とともに育てていくというプレイスメイキングの視点は、これからのまちづくりを考えるうえでのヒントになるのではないでしょうか。
文責:細矢瑞稀(日本大学大学院理工学研究科博士前期課程建築学専攻2年 都市計画研究室(泉山ゼミ))
