受賞者インタビュー
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「2018年日本建築学会作品選奨」「2017年度JIA新人賞」受賞記念インタビュー:馬場兼伸、江泉光哲、金井直(日大OB)
by SHUNKEN編集部

今回のSHUNKEN WEBは、本学の卒業生が2018年日本建築学会作品選奨および2017年度JIA新人賞を同時受賞された際に行ったインタビュー(『駿建』2018年10月号に掲載)の再掲記事となります。(JIA新人賞は馬場さん単独の受賞) 同学科の渡辺富雄教授、古澤大輔助教(いずれも役職は当時)がインタビュアーとなり、受賞に至る経緯と受賞された建築「東松山農産物直売所」に対する想いについてお話をうかがいました。

受賞記念インタビュー From SHUNKEN 2018 Oct. vol.46 no.3

 

日大OB3人の共同設計が生んだ「東松山農産物直売所」

「東松山農産物直売所」外観

古澤:この度は、受賞おめでとうこざいます。 馬場さんは、今回、「東松山農産物直売所」で、 「2018年日本建築学会作品選奨」と 「2017年度JIA新人賞」を同時に受賞されました。 「JIA 新人賞」は馬場さん単独で、「作品選奨」は江泉さん、金井さんと連名で受賞されています。 馬場さんが若色研、金井さんは高宮研、そして江泉さんは今村研の卒業生で、全員が本学のOBなのですが、 3人で共同設計することとなった経緯からお聞かせいただけますか。

馬場:最初は基本構想のプロポーザルの段階で、独立したてだった江泉さんに「一緒にやってみない?」と誘ったのがきっかけでした。その後、話が進み、基本設計に入る段階で、金井さんにも声をかけて参加してもらいました。

金井:僕が加わったときには、既に馬場さんと江泉さんとの間で基本的な案というか考え方が共有されていたのですが、それを見て、面白そうだな、と感じたので、「一緒にやらせてください」とお願いしました。

古澤:そうだったのですね。 ちなみに、それぞれの役割は、どのようなものだったのでしょうか。

馬場:僕は全体のフレームワークとクライアントが主でしたが、設計プロセスと形態や空間性が直結するような方法を取ったので、正確にはフレームワークのメンテナンスに奔走する何でも屋という感じでした。

江泉:僕の役割は、ワークショップなどを行い、直売所を日々活用する生産者たちの意見を吸い上げたり、 建築確認申請関係の整理を担当していました。

金井:僕は途中参加だったので、 最初は、ブレインストーミング要員というような意識で参加していました。

馬場:江泉さんには、 プロジェクトの中で、マルチにいろいろと担当してもらいました。一方で、 金井さんには、 特に実施設計での具体的な検討を引っ張ってもらいました。 CGや図面での検討、法令や材料などの情報収集や整理の早さには本当に助けられました。それが、 物としての作品の強度を大きく上げていると思います。「K型ブレース」も、金井さんとの議論から生まれたものです。

「東松山農産物直売所」内観

古澤:なるほど。 よくわかりました。 皆さんは学生時代から知り合いで、意思疎通もよりスムーズだったんじゃないかなと想像しますが、逆に良く知っているからこそのやりづらさみたいなものはありましたか。

金井:もちろん、実際の作業の中で苦労はいろいろとありましたが、僕は楽しい以外のものはありませんでした。

馬場:金井さんは、学生時代からいつも紳土的なのですが、それでも火花を散らすことも多々ありました(笑)。

金井:簡単に同調してはいけないっていう意識は、確かにありました(笑)。

江泉:僕は、結構、複雑な立ち位置でした。なぜなら、かつて古澤さん、馬場さんが共同主宰されていたメジロスタジオのスタッフとして働いていたからです。師弟関係と言うと大げさかもしれないですが、意識はせざるを得ませんでした。でも、僕は、もう一人の建築家として独立していたので、メジロスタジオを巣立った姿を見てもらおうと、今回のプロジェクトでは、馬場さんと同じ立場できちんと発言しようと心がけました。だから、いつも3人が対等な関係だったと思います。一方で、馬場さんと金井さんが同級生なので、そこにまた複雑さはあったのですが(笑)。

古澤:なるほど。それは結構複雑ですね(笑)。でも、こういった複雑な状況を束ねる指標として、今回の作品のコンセプトである木軸グリッドの「プラットフォーム」が、共同設計者の中でもコミュニケーションツールとして有効に作用したのではないか、とお話をうかがっていて思いました。

「東松山農産物直売所」内観

素朴さの中に工夫を凝らした大空間建築

古澤:渡辺先生は、馬場さんが学生だったころの指導教員でもありますが、渡辺先生から見て、本作品をどのように感じましたか。

渡辺:「東松山農産物直売所」の空間は、伸びやかで、凄く良いと思いました。構造の「K型ブレース」というアイデアも。通常、斜めに部材の節点同土をつなぐのが僕たちの感覚だけど、それを柱に伸ばすというのがユニークでした。筋交いというのは柱と土台をつなぐものだから、普通に考えていてもこうはなりません。

古澤:応力の伝達を意匠的に解くというのは、構造的な知見がなければ決定できないものです。今回、構造設計を担当されたのは、本学卒業生で、斎藤公男先生の研究室を出られた多田脩二さんです。多田さんとは、どのようなやりとりがあったのでしょうか。

馬場:多田さんはどちらかというと、後ろから見守っていてくれた感じですね。というのも、意匠が描く形態が先にあって、構造家がそれを成立させるというプロセスではないんです。多田さんは、ある制約の中で、どう動いても構造的に破綻しないルールを提示してくれました。だから、設計中にしよっちゅう顔を合わせて話す必要がありませんでした。とは言え、この仕組みはどこでも実現されていないものですから、監理段階ではとても苦戦しました。多田さんは、システムと個別解を共に面倒を見てくださり、「K型ブレース」のような全くの新構法については、実験で確認して筋を通してくれました。

古澤:僕も現地に行かせてもらいましたが、この「K型ブレース」は、平面的なスタディと展開図による高さ方向のスタディが、同時に行われている気がしたのですが、その辺はいかがですか。

江泉:当初、馬場さんの頭の中にあったつくり方は、高さ方向の指定ってそんなに強くなかったと思うんです。でも、3人で検討していく中で、こういった大空間の建築で、いろんな人が関わる場合に、やっぱり強いルールみたいなものを持っていないと、設計が前に進まないっていうところが出てきました。

馬場:確かに、途中から、高さ方向の超越性というか、頭上で束ねる意識が強くなりましたね。斜材の配置や角度の検討に相当労力を割いているけれど、平面図に全く表れないというのも良かったです。

江泉:45度ですね。

馬場:そう。この45度の頬杖というのが、一番基本的なエレメントなんです。頬杖でスパンを短くするという考え方です。梁成を柱径と同じにすることで、たくさん必要になり、脇役が統合するものになっていきました。屋根も45度のトラスにしています。

渡辺:3つの屋根が綺麗なシルエットをつくり出していて、ロケーションと良くマッチしていると思います。

古澤:電車からも良く見えますので、3つの屋根は面白いシンボル性も獲得しています。

左から、金井さん、古澤先生、渡辺先生、馬場さん、江泉さん

学生時代の体験は、必ず将来に活きる 自分で考える力を身に付けて!

古澤:今日は、馬場さんの指導教員だった渡辺先生がコメントをくださっていますが、金井さんと江泉さんが学生だったころ、指導の先生から学んだことを、改めて教えていただけますか。

金井:僕は、高宮研究室に所属して、学部で卒業しました。なので、大学院を経験した方と比べたら、先生とそれほど濃密な時間を過ごせていないと思います。でも、高宮員介先生といくつものやリとりをする中で、「建築の社会性」みたいなものを最初に意識させられました。建築の形態を決めることは、本当にシビアなことです。だから、いつも先生に「この形態を本当に真剣に考えてるの?」と、強く言われたことを覚えています。そういったことは、すべて今につながっていると実感しています。

古澤:今回の作品は、よリ社会的かつ公共的にワークショップを導入して、建築の形態を決定していきました。

江泉:僕は、今村研究室の4期生です。研究室には、4年生、大学院1、2年とほぼ3年間いたわけですが、当時は、研究室で取り組んでいたアートイベントなどを担当して、よく子ども向けのワークショップを行っていました。その中で、いろんな方と知り合い、プロジェクトをどう運営し、完成させていくのかについて、たくさん学びました。今、金井さんがおっしゃっていた建築の社会性とは別の意味で、社会的な関わり方を現場で学びました。今回の「東松山農産物直売所」での生産者たちとのワークショップは、そういった経験があったからこそ、実現することができたという感覚があります。

古澤:大学での学びが、自分の設計事務所を構えて、独立した後も役に立っているということですね。

江泉:それは本当にそう思います。建築をつくるときには、とにかくいろんな方からの意見をくみ取る必要があります。だから、研究室での活動や体験は勉強になりました。あと、僕の場合は、メジロスタジオという設計事務所の中で濃密な時間を得られた経験も、今に活きていると感じています。メジロスタジオには、古澤さんと馬場さんの他にも、黒川泰孝さん(高宮員介研究室卒)という3人のボスがいたのですが、その3人は、性格も違えば、意見が毎回違うんです(笑)。その中で、事務所で所員が僕1人だけという(一同笑)。でも、あの状況は、他者の意見をうまく自分の中で消化して、施主の特徴に合わせて対応する、引き出しを増やすためのトレーニングになりました。誰かにパスをするときに、どのパスが一番有効かを、常に考えながらコミュニケーションを取り続けるような感じです。

古澤:そうですか。そう言ってもらえると、私たちとしても救われますね(笑)。では、最後に馬場さん、学生に向けて一言お願いします。

馬場:月並みですが、考える力を付けてほしいと思います。既成の枠組みに頼れなくなってきている上に、その変化も一様ではない現在。「動き」を意識してもらいたいです。「動き」を考えると「動かないものごと」にも目が向いて、両者の間に起きていることに気づけるかもしれません。でも、座学でも日常生活でも、目の前の答えだけに固執せず、自分なりの見解を持てれば楽しいと思います。

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