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Visit & Criticism 学生建築探訪 vol.13 「渋谷」 見学記
by SHUNKEN編集部

Visit & Criticism 学生建築探訪 From SHUNKEN 2020 Apr. vol.48 no.1

 

稲村浩成・久保開陸・佐藤玲菜・西田美奈・平山茉歩・森野和泉(4年|古澤研究室)

 

今、渋谷の街が大きく変わろうとしています。「渋谷ヒカリエ」の完成から約7年、「渋谷スクランブルスクエア第一期(東棟)」や「渋谷フクラス」といった駅前再開発に加え、渋谷 PARCO の建て替え計画「渋谷パルコ・ヒューリックビル」などが完成し、長年にわたって検討が重ねられてきたアーバンデザインが実現されつつあります。今回は、このダイナミックに変革する渋谷を実際に見て歩いた見学記!

西田:よく遊びに行くけど、渋谷は駅前から感じる大きなスケールだけではなく、裏側の路地空間が魅力的なんだよね。昔の渋谷 PARCO はヴォリュームが分節されて街になじんでいたけど、今回新しくなった「渋谷パルコ・ヒューリックビル」はワンヴォリュームになってしまったので、あまり街に合っていないように思えた。

平山:昔の状態は知らないのだけど、私は建物の外周部に地上の路地を引き込む立体街路の構成に好感を持てた。たぶん、建築家の内藤廣さんや都市計画課の岸井隆幸さんらが提唱した再開発の核となる「アーバンコア」の概念を取り入れたものなのかな? だけど、平日に行ってみたら、立体街路は思ったより賑わいが無くて、内部と外部が断絶されている印象を受けて少し残念だったな。

西田:もし賑わっていたとしても、渋谷に来た人の回遊が建物の中で完結してしまうので、街全体にとってどちらがいいのかわからないね。

平山:そうだね。渋谷は多様性を売りにしているのに、高層ビルは内部空間をパッケージ化してしまうので、昔の路地性が失われてしまうのかも。

稲村:でも、僕は新しいパルコの地下のレストラン街(カオスキッチン)は、雑多な感じがして面白かったけどな。この多様性は外国人とかには解りやすくて良いのでは。

森野:でも、それもつくられた多様性だから、結局ワンパッケージによる囲い込みの構図だよね。そもそもこれは資本主義の構図そのものだから、建築の中に閉じ込められてしまうのは当然っちゃ当然だと言える。

久保:立体街路は街から見上げるとそんなに見えないけど、実際に歩いてみると僕は気持ち良かった。今まさに生まれ変わろうとしている渋谷の駅周辺を俯瞰する視点を獲得したことは評価できるんじゃないかな。ここから渋谷のイメージが発信されていく可能性を感じた。

佐藤:駅前を俯瞰する視点ができるのは、ここが駅から少し離れているからだよね。駅に近くなるとどうなるのか、ちょっと駅前まで行ってみようよ。

平山:いかんせん複雑すぎるね、渋谷は。人や交通網が入り組み過ぎているから、動線を可視化させる試みの「アーバンコア」が効果的に機能しているか疑問に感じる……。

西田:駅前広場が工事中だからなのか、「アーバンコア」が駅の乗り換え機能に寄与していたとしても、完成形が見えないのが不安になるなぁ。稲村:僕はもともと田舎育ちだから、この混沌とした感じはあまり好きじゃないな。同じ都会でも表参道や代官山のほうに魅力を感じるよ。でも、この違いは何に起因するのだろう?

平山:街で過ごす時間の質の違いかも。渋谷や新宿はエネルギッシュで滞留する時間が短いという印象。一方で、表参道や代官山は流れている時間のスピードがゆっくりに感じる。街のアクティビティから感じる速度の違いが、再開発の質に表れているのかもね。佐藤:私の場合は、むしろ渋谷や新宿のほうに居心地の良さを感じるな。私が思うのは、表参道や代官山は、ゆっくり時間を過ごさなければ「いけない」と感じてしまう堅苦しさ。その点、渋谷のほうが断然時間の選択可能性に富んでいると思うんだよね。

西田:言ってみれば即物的な居心地の良さだよね。目的的ではなく無目的的に過ごせる時間って大事だと思う。

稲村:なるほどね。僕はどちらかというと目的的に過ごしたいタイプだということか。都会に来たのに無目的に過ごすなんてもったいない。家が遠いからかも知れないけど(笑)。

久保:「渋谷スクランブルスクエア」の屋上にある「SHIBUYA SKY」からは、東京全体が見えた。東京タワーやスカイツリーのような、観光地的な目的性を持った視点場が、駅前という日常空間にあることが驚きだよ。とてもインターネット的というのか。ユーチューブをだらだらと見ていたら、物凄い面白い映像に出会ってしまったかのような感覚!平山:確かに展望台というのは、稀有で高価値なコンテンツだね。でも、こうしたコンテンツがどんどん渋谷の街に溢れたら、価値のインフレを起こすんじゃないかと心配にもなるね。

森野:それは言い換えると、モノである建築の価値が置いてかれてしまうという危機感だと思う。コンテンツ、つまりソフトが日々ダイナミックに更新されていく一方で、ハードのあり方が問われている。超高層という開発手法も近代的な価値基準の範疇だから、私たちはその先を見ていかないといけないよね。

 

1:開渠の渋谷川と渋谷スクランブルスクエア。2:公園通りから臨む渋谷パルコ・ヒューリックビル。3:夜のスクランブル交差点より渋谷ヒカリエ(左)と渋谷スクランブルスクエア(右)。4:渋谷パルコ・ヒューリック

ビル地下1F。飲食店の活気が天井と床面に反射する。5:新たな銀座線渋谷駅の改札。6:六本木通り・首都高速道路と歩行者デッキが空中交差する。7:渋谷ヒカリエ(左)と渋谷スクランブルスクエア(右)に銀座線(下)が走る。

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