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地域デザイン研究室の井本先生(理工准教授)が考える”建築の面白さ”
by SHUNKEN編集部

時代と共に変わっていく様式と受け継がれていく様式

ケニアのとある農村部。干ばつの厳しい地域で貧困度が高く、いわゆる士と木の枝で 建設した伝統 「風」の家屋が残っています。伝統建築は、「ヴァナキュラー建築」や 「建築家なしの建築」などと形容され語られてきました。

「伝統」を見極めることはとても難しいことです。ケニアの農村部がある奥まった地域でも、キリスト教布教活動に伴うヨ ーロッパ人の到来以降、円形平面の家屋から矩形の家屋へ、土と木の枝を使った構法から煉瓦造へ、茅葺きからトタン葺きへと、「近代化」 が少しずつ進んでいます。しかし、実際に家々を訪ねていくと、屋根だけが、壁材だけが、間取りだけが近代化した、伝統と近代のハイブリッドがほとんど。バリエーションが豊かで、それが各家屋の個性になっていたりします。 「士壁の円形家屋が落ち着く」と言うおじいちゃんがいたり、大都会のナイロビと行き来す るお父さんがいる家庭では、都会で流行りの装飾を母屋に施したリしています。さまざまな場所から持ち込まれた技術や建材、装飾が、入リ混じりながら共存して いる様子が見えてきます。

さて、この地域の士壁はとても弱く、数年で風に倒されたり、屋根が飛ばされたリ、雨で朽ちたりします。なので 「窓」はなく、あったとしてもとても小さく、決して風上に向けて開口を設けないのがこの土地でのルールでした。そこに建具が持ち込まれ、ガラスが持ち込まれると、風向きを気にすることなく開口がつくられるようになります。様式からの解放です。ただし、どんなに煉瓦で堅牢につくられ、大きな窓のある家屋であっても、母屋の入リロは必ず風下を固いている。その士地と家屋の関係の原点が、こうして引き継がれていきます。

1970年代はまだ円形茅葺きの家屋が多い。 ひとつの家屋敷は複数の家屋で構成されている。(出典:Kaj Blegvad Andersen: AFRICAN TRADITIONAL ARCHI­TECTURE, Oxford University Press, 1978)

 

現在の家屋の例。 一番大事な母屋は煉瓦でつくられている。 目の前の樹木下が家具職人である家主の仕事場。

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